病院に行くための車のガソリン代は医療費控除の対象にはなりません #63

税金や会計のヒント

医療費控除の対象となるもの

よく「病院への交通費も医療費控除の対象になる」という事を聞かれるかと思います。

この根拠は、所得税法施行令第207条第3号です。

(医療費の範囲)

第207条 法第73条第2項(医療費の範囲)に規定する政令で定める対価は、次に掲げるものの対価のうち、その病状その他財務省令で定める状況に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とする。

一 医師又は歯科医師による診療又は治療

二 治療又は療養に必要な医薬品の購入

三 病院、診療所(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)又は助産所へ収容されるための人的役務の提供

(以下略)

人的役務の提供

人的役務の提供とは、一般の方には聞きなれない言葉かもしれませんが、税に関わっている人間は、よく使う言葉です。

訳すと、「他人に何かのサービスをしてもらうこと」、でしょうか。ここでは、通常は、公共交通機関を指します。バス、電車などです。

したがって、家族に自家用車で送迎してもらったガソリン代は、医療費控除の対象になりません。そもそも、ガソリン代のうち、病院への送迎部分を区分するのもたいへんです。領収証の添付又は保存が義務付けられています。送迎の部分だけの領収証を取得するのは困難でしょう。また、送迎者に手当を支払ったとしても、公共交通機関と違って、合理的な金額の判定も困難です。

一般的に支出される水準

ではタクシーは、どうでしょうか。これは、確かに人的役務の提供を受けています。しかし、バスや電車の数倍の値段がするタクシーを使うと所得税法施行令第207条本文の「一般的に支出される水準を著しく超え」ると考えられ、支払ったタクシー代は医療費控除の対象とはなりません。

ただ、急病や歩行困難など、タクシーを利用することに合理的な理由があれば対象になります。この場合でも、単に「便利だから」では通じません。

過去の医療費控除に関する記事

【編集後記】

現職時代、納税者からの相談を受けます。中には、「これは医療費控除の対象になりません。」と言っても納得してくださらず、「〇〇さんが対象になると言った。」と言われることがありました。

「〇〇さんとはどなたですか?」と聞くと、「知人だ。」と。さらに詳しく聞くと、その方は税に関わりがある方ではない様子です。「申し訳ありませんが、その方よりも私たちの方が税には詳しいと思います。」と対応していました。不満そうに帰られますけど…。

確定申告時期になると、怪しい情報が流れます。また、人というのは、自分に都合が良い情報だけを選択することがあります。信頼できる組織(人)から、正しい情報を得て申告しましょう。

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