消費税において基準期間が免税事業者の納税義務判定 #62

税金や会計のヒント

小規模事業者に係る納税義務の免除

消費税法では、事業者は消費税を納める義務があることを定めています(消費税法第5条)。

しかし、事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者については、消費税を納める義務が免除されています(消費税法第9条)。

例えば令和3年度に納税義務があるかどうかを判定する基準期間は、その2年前である令和元年度です。この年の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定します。この判定は、毎年行います。

そして、課税売上高とは、売上高から消費税を除いたものです(消費税法第28条)。

小規模事業者にとって有利なこの免除制度は、益税(消費税が納税されず事業者の利益になること。)が発生することから、長年問題となっています。

基準期間が免税事業者

免除規程があるため、売上高が1,000万円前後の事業者は、消費税を納める年があったり、納めなくてもよい年があったりします。

では、2年前である基準期間では免税事業者であった場合、その2年前の売上高には消費税は含まれているのでしょうか。

結論から言えば、「消費税は含まれていない」と考えます。

現実には、免税事業者であっても、消費税相当分を頂いているところが大半でしょう。仕入や経費の支払い時に消費税分を払っておられますので、売上にも消費税相当分を上乗せしないと、その分利益が減ってしまします。

しかし、消費税相当分を頂いていたとしても、免税事業者のそれは消費税ではありません。単に売上に、一部の金額を上乗せしているだけと考えます。

最高裁判決

平成17年2月1日、最高裁は、「当該基準期間が免税であった事業者の課税売上高については,当該事業者の売上総額から消費税相当額を控除して算定することが認められない」と判断しました。

長年、税務当局と納税者(税理士)とが実務上でトラブルになっていましたが、これによりはっきり(スッキリ)としました。

おかしな現象

例えば、令和元年度に開業して、毎年の売上が1,050万円の事業者がいたとしたら、次のような現象が発生します。

  • 令和元年度 免税事業者
  • 令和2年度 免税事業者
  • 令和3年度 課税事業者(令和元年度の課税売上で判定)
  • 令和4年度 課税事業者(令和2年度の課税売上で判定)
  • 令和5年度 免税事業者(令和3年度の課税売上で判定)
  • 令和6年度 免税事業者(令和4年度の課税売上で判定)
  • 令和7年度 課税事業者(令和5年度の課税売上で判定)
  • 以下続く…。

同じ売上金額なのに、消費税が課税されたり免税されたりします。

まとめ

基準期間の課税売上高の計算過程においては、課税事業者であった年は消費税を除き、免税事業者であった年は消費税相当分を除きませんので、注意が必要です。

【編集後記】

令和5年度にインボイス制度が導入されたら、多くの事業者が、売上が1,000万円以下であっても課税事業者を選択するだろうと言われています(1,000万円以下でも手を挙げることは可能)。

そうなれば、益税が減ることになり、消費税を支払った消費者にも納得していただけるかもしれません。

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