税理士とのミスマッチはなぜ起こるのか

税金や会計のヒント

税理士への不満の分析

創業に当たり私は、インターネットで検索して既存の税理士への不満を調べました。自分がその不満の対象にならないようにと研究したのです。そして、その不満は、おおむね次のとおりに集約できました。

  • 提案がない
  • 顧問料が高い
  • 訪問が少ない
  • 人柄が合わない
  • 仕事が遅い、ミスがある
  • IT知識に疎い
  • 連絡が取れない

これらは、クライアント側からの不満ですが、税理士側にも言い分があるかもしれません。

提案がない

クライアント
クライアント

記帳や申告の代理といった定型的な業務しか行わず、節税対策や経営のアドバイス、融資に有利な申告書類の作成などの提案がなく、自分から質問しないと答えてくれない。

某税理士
某税理士

契約は、「税務」と「会計」の業務のみであり、経営のアドバイスや融資に有利な申告書類の作成などは対象外である。いくら顧問だと言っても、何でもかんでもやらせないでほしい。契約書を読み直してもらいたい。

業務(顧問)契約書のひな型(モデル)では、委任業務の範囲として「税務」と「会計」の項目があります。その中身も、「経営」はおろか「節税対策」も入っておりません。

解決策としては、まずは、契約時の話し合いです。

ひな型(モデル)には、「前記に掲げる項目以外の業務については別途協議する。」とされています。言われるがままに契約書にサインするのではなく、契約される際には、税理士は何と何をしてくれるのか、何と何は別料金になるのか、よくよく話し合ってお互い確認し合ってください。

もちろん、契約後でも、協議は可能です。お互いにコミュニケーションを大切にしましょう。

ちなみに、私の契約書の委任業務の範囲には、税理士としての「税務」と「会計」の他に、中小企業診断士としての「経営」をはっきりと明文化しています。

顧問料が高い

クライアント
クライアント

税理士報酬というのは明確な料金体系がないので、「言い値」で顧問料を提示されてしまう。

某税理士
某税理士

見積書は提示している。納得されたから契約されたのでは。

税理士報酬は、インターネットで検索すれば、公開している事務所があるので参考にしてください。ただし、前述の契約書の件と同様、実際に何をしてくれるのかを確認する必要があります。それぞれの事務所が提供するサービスは異なっています。

一般的には、格安顧問料の事務所は、最小限のことしかしてくれないでしょう。それ以上のことは、別料金となり、結局安くなかったという話はよく聞くところです。(そうしないとあの金額では、到底成り立たないと思います。事務員さんを泣かせれば別ですが。)

また、安い単価の事務所では、顧問先を増やすことを目指さざるを得ないでしょう。その反動で、1人のクライアントへ投じる時間は減らすしかありません。

ところで、自分でこの仕事をしていると、税理士の顧問料は、私はそれほど高いとは感じていません(他の「士業」も同様です)。士業の知識と経験には、それなりの価値があると考えています。私は、不動産登記に関する作業は、すべて自分でやりましたが、その手間暇を司法書士にお願いした方がお得だと感じました(経験しておきたかったので、自分でやってみたものです。)。また、自分では到底できないレベルの作業は、弁護士や土地家屋調査士に、過去何度もお願いしたことがあります。

ホームページで公開している私の顧問料(目安)は、格安事務所と比べれば高く(全国的には平均的に)設定しています。これは、契約に「経営」が入っているからです。税理士と中小企業診断士を別々に契約する場合と比較していただければ、有り難いです。

一方で、クライアントは「10件まで」として、1人(社)にかける時間を増やしています。私の理想は、税理士と診断士として、3対7くらい時間を分け、経営の方に力を注ぐことです。契約した初期の頃に、それぞれのクライアントに合ったクラウド会計ソフトのマニュアルを作成し、経理(記帳)事務を大幅に削減した後、経営相談に重心を移動させる計画です。

訪問が少ない

クライアント
クライアント

訪問に別途料金が請求されたり、訪問があっても無資格の担当者が来たりする。

某税理士
某税理士

料金は格安なのだから訪問に別途料金がかかるのは当然である。

某税理士
某税理士

無資格と言っても会計のベテランであり、その能力は十分に高い。

毎月クライアント先を訪問する税理士は多いと思いますが、当然コストはかかります。料金だけで選んだり、何をしてくれるのを確認せずに契約したりすると、上のような問題が発生します。

毎月の訪問は、月次決算の報告や、会計処理の指導が中心になると思いますが、その場合であれば、税理士の資格は不要です。税理士しかできないのは「税務」の業務であり、「会計」の業務には資格は不要です。

とはいえ、「会計」と「税務」は、作業の中でどうしても重なる部分があります。どこまでが「会計」で、ここからが「税務」という線引きは非常に困難です。

私は、税理士として、クラウド会計ソフトなどのITを活用し、可能な限り経理業務を効率化(目標:1/5)しようとしています。一方で、中小企業診断士として、毎月最低1回はお会いして経営の話をしたいという希望を持っています。

人柄が合わない

クライアント
クライアント

「高齢で話しかけづらい」「態度が高圧的で横柄」「説明が難しくわかりづらい」などの不満や価値観が合わなかったり、コミュニケーションが上手く取れなかったりする。

これは、契約前に、お互いの人柄や価値観、方向性などを確認しておくべきでした。私は、クライアントと税理士の契約は、結婚と同じように考えています。

お互いのことを知らずに結婚して、後から不満を言っても仕様がありません。また、クライアント側は「知人の紹介だからお願いする」とか、税理士側は「お世話になっている方からの紹介だから受ける」とかで契約すると、このようなミスマッチが起きることがあります。

私のスタンスは、紹介があればありがたくお受けしますが、まずは、「私のホームページをご覧になっていただき、『一度会って話を聞いてみようか』と思われたらご連絡ください。」とお伝えします。私は、ホームページには、自分のことを事細かく公開しています。私の方針にご理解いただけた上で、改めて面談をお申込みいただけると幸いです。

仕事が遅い、ミスがある

クライアント
クライアント

申告書類の作成が遅い、経理で計上できるのにミスがあり税金を余分に払うことになった等、仕事の質に不満を感じる。

某税理士
某税理士

求める書類の提出は遅いし、書類の整理整とんができておらず、尻ぬぐいをしているのはこちらの方だ。

作成スピードは、お互いが何をどこまでやり、かつ、その期限を決めておけば解決します。遅れた場合の責任の所在もはっきりしますので、お勧めします。

経理のミスについては、誠実な事務所であれば、こと細かに検討しています。そのため、疑問点があれば事務所から連絡が来ると思いますが、その場合、億劫がらずに誠実に対応して差し上げてください。

IT知識に疎い

クライアント
クライアント

会社のIT化を積極的に提案してくれない。ITに関する質問をしても回答に時間がかかる。

某税理士
某税理士

税理士事務所はITの専門家ではない。また、契約外の業務である。

ITは日々進化しています。普段から情報を入手するとともに、相応の勉強が必要です。事務所との普段のやりとりが、郵送やファックスしかない所であれば、期待はできないかもしれません。最低でもメール、できればクラウドストレージを使っているような事務所でなければ、そもそも「IT化」の相談相手ではないでしょう。

なお、ITに強い税理士を求めるならば、インターネットで探すのが近道です。

連絡が取れない

クライアント
クライアント

相談したいときに連絡しても連絡がとれない。

某税理士
某税理士

忙しい時に何度も連絡されて、こちらも困っている。

普段の連絡手段は、取り決めておられますか。また、緊急時はどうですか。

私の場合は、相談は、正確性を重視するため、メール又はSNS(LINE)でお願いしています。そして返答は、原則として24時間以内(営業日単位)に行います。なお、急ぎの場合は、電話も可としています。

まとめ

税理士は、ころころと代える相手ではないでしょう。自分の事業内容や結果、更には財産まで知られることになります。中には「一目惚れ」もあるかもしれませんが、契約前によくよく話し合って決めましょう。複数の税理士とお会いするのも有効かもしれません。目先の金額の多寡で決めるのではなく、料金と成果物を比較してください。税理士との契約は、代表者の「経営判断」の一つです。

【編集後記】

ネットの中、実生活での噂話、あちらこちらで税理士への不満を聞きます。私自身も、独りよがりにならずにクライアントに向き合っていきたいと、今日のブログを書きながら改めて思いました。

〈昨日の感謝〉

昨夜は、先輩税理士と久留米の焼き鳥やに行きました。いろいろと税理士界のお話を伺い、大変参考になりました。懇親会後は、先輩の奥様が車でお越しになり、なんと、私の自宅まで(車で30分)送ってくださいました。大変、恐縮しております。ありがとうございました。

その上、その車の中にスマホを忘れるという失態まで犯してしまいました。今日、今から取りに行きます。反省…。

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