遺族年金は課税か非課税か #53

税金や会計のヒント

遺族年金を受け取った方への課税

税務署勤務時代もよく質問されました。

結論から申しますと、「非課税」です。所得税や住民税を計算する上で遺族年金は、「無かったもの」と考えて結構です。

租税における負担の公平から考えると「収入があるのになぜ課税されないのか?」という疑問はあります。おそらくは、戦後、主として夫を亡くした女性の生活の主たるよりどころとして保護するためだったと考えてます。

そういう考えで言えば、遺族年金以外にどれだけ所得があろうとも非課税になるというのは、やや疑問を持つところです。

国税庁のタックスアンサー№1605

参考に、国税庁ホームページのタックスアンサーを掲載します。

 厚生年金や国民年金などの被保険者であった人が亡くなったときは、遺族の方に対して遺族年金が支給されます。また、恩給を受けていた人が亡くなった場合には、遺族の方に対して遺族恩給が支給されます。
 次の法律に基づいて遺族の方に支給される遺族年金や遺族恩給は、所得税も相続税も課税されません。

 国民年金法、厚生年金保険法、恩給法、旧船員保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、旧農林漁業団体職員共済組合法

遺族年金という名称のものは、通常これらに含まれます。私は、これら以外に遺族年金を名乗るものに出会ったことはありません(たぶん無いと思います。)。

遺族年金を受け取った方を扶養している方への課税

税金の計算対象から外してくれるものが所得控除と呼ばれるもので、全部で14種類あります。この中の一つが扶養控除と呼ばれるものです。

扶養控除に該当する扶養親族(16歳以上)とは、次の4つの条件にすべて当てはまる人です。

  1.  配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
  2.  納税者と生計を一にしていること。
  3. 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
  4.  青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

この条件の「3.」の48万円以下ですが、遺族年金は非課税なので遺族年金を考えずに扶養親族かどうかを判定します。したがいまして、遺族年金以外で所得(収入ではありません。)が48万円以下であれば、どれだけ遺族年金を受け取っていても、この条件に合致いたします。したがいまして、扶養控除の対象となります。

ちなみに、「2.」の「生計を一」というのは、同居はもちろん別居でも構いません。施設に入っている方も含まれます。「別居で扶養している方」というのは、主たる生活資金を仕送りしている場合などを言います。

「いくら仕送りしたら良いのか?」という質問もありますが、そのような基準はありません。このような質問を受けたときに税務に携わる人間が使う言葉は、「社会通念上(「常識的な考え」のこと)で判断します。」です。人によって生活費は違いますから、一律の数字はありません。常識的に判断します。

まとめ

遺族年金は、自分にも課税されませんし、自分を扶養してくれる親族の税金も少なくしてくれます。

なお、健康保険の扶養については、遺族年金も収入に含まれますのでご用心を。

【編集後記】

まじめな方ほど、よく「遺族年金は、申告しなくていいですか?」と尋ねられます。税務職員時代は、税金を「頂く」お願いが多かったのですが、この場合は「頂かない」返事でしたので気が楽でした。

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