年末調整や確定申告で間違えない生命保険料控除の受け方 #52

税金や会計のヒント

生命保険料控除

日本に、生命保険を普及させるために生まれた生命保険料控除です。税金の公平な負担とは関係がないこれは、政策(政治)的な減税です。「日本人は保険好き」と言われている今、これが必要なのかと、税を勉強してきた人間からすれば、合理性が低い控除です。保険を掛けられないような所得の低い方は、この控除は受けられませんし。

とは言え、あるものは使わないと、顧客に怒られます。

5つの種類

生命保険料控除は、最初に次の5種類に分けて計算します。この時点で既に複雑です(笑)。

  • 新生命保険料
  • 旧生命保険料
  • 介護医療保険料
  • 新個人年金保険料
  • 旧個人年金保険料

「新」と「旧」は、法律改正の後に販売された保険なのか、法律改正の前に販売された保険なのかの違いです。

以前から契約していた保険のうち、新しい法律が適用されて控除を受けられなくなってはかわいそうということで残っています。時が過ぎ、誰も契約者がいなくなれば、新旧の表示はなくなるでしょう。その前に、「新新〇〇」というのができるかもしれませんが…。

年末調整に必要な「給与所得者の保険料控除申告書」

「税の専門家でない私が5つに分けられるのだろうか?」という心配は杞憂です。

生命保険会社から年末調整時期に送られてくる生命保険料控除証明書に必要なことはすべて記載されています。この証明書の中で、次の事項を確認してください。ちなみに私は、これらの部分を蛍光ペンで塗っています。そしてカラーコピーで保存しておくことで、翌年の証明書が分かりやすくなりますので、おススメです。年に1回の作業なので、翌年の今頃は忘れていることが多いです。

  • 保険会社名
  • 保険種類
  • 保険期間
  • 契約者名
  • 新旧の適用制度
  • 証明額(1年間に支払った保険料の金額)

ここで注意が必要なのが「証明額(1年間に支払った保険料の金額)」です。保険料控除証明書は、通常10月ごろに送られてきます。保険会社が証明するのは、「それまでに払い込まれた保険料の額」です。しかし、10月以降も保険契約が続くことがほとんどでしょう。そこで保険会社は、12月までに払い込まれたと仮定した場合の額も記載しています。納税者の中には、「証明額だろうと」勘違いされて、証明額で申告される方がいらっしゃいます。控除額が少なくなって、余計な税金を払うことになります。職場において、このような申告書をたくさん見て来ました。まだ保険料を払っていなくても大丈夫です。年末調整で申告するものは、扶養控除なども含めて、基本的に「12月末はこうだろう」という予定の申告です。安心して、後者の「12月までの金額」を記入してください。万が一、解約などがあり金額が変更した場合は、年末調整の再調整又は確定申告で精算すれば結構です。

この他に保険金の受取人の名前が必要ですが、これは通常証明書に書かれていません。保険証書で確認しておいてください。

生命保険料控除の計算

アプリを導入されていない会社の場合は、上の情報を基に保険料控除額を自分で計算する必要があります。

ここでも間違いが多いのが、上の保険料の金額をそのまま生命保険料控除の金額と思い込まれることです。

「給与所得者の保険料控除申告書」の左下に2種類の計算式が掲載されています。5種類の保険料は、それぞれ合計額をA~Eの太枠(オレンジ〇部分)に記入します。

さらに、それぞれの最高額と合計した後の最高額の範囲内で枠(オレンジ□部分)を埋めていきます。そして、最終的には申告書の一番下の真ん中を埋めます。これが、生命保険料控除額(上限12万円)となります。

確定申告における生命保険料控除

所得税の確定申告書には、保険料控除申告書の計算式を載せるスペースはなく、計算後の数字を記入する欄しかありません。そのため、自分で計算するためには、「手引き」を入手するか、国税庁ホームページで計算式を調べる必要があります。

国税庁としては、いまどき手計算は想定していないのでしょう。

なお、計算式は、年末調整で計算するのと同じです。

税理士と契約されていない方は、確定申告は、国税庁ホームページの確定申告書作成コーナーから申告されることをおススメします。ものすごく優秀なアプリです。私は税理士ですので、いろいろな税金の申告用ソフトが必要ですが、所得税に関しては、この国税庁ホームページで事足りると考えていますので、購入いたしません。

今は、スマホ版も出ております。給与所得者や年金受給者の方なら、スマホで十分です。

ちなみに電子申告をすれば添付書類が不要になりますが、そのためには、税務署でIDとパスワードを取得する必要があります。確定申告会場でも取得できますが、混雑しますので、お近くの税務署で今のうちに入手してください。1回だけの手間です。

まとめ

  • 生命保険料控除の対象は5種類に分類されます。
  • 生命保険料控除証明書には年末調整や確定申告に必要な情報がすべて網羅されています。
  • 支払った保険料は、証明額ではなく12月末まで支払ったと仮定した場合の金額です。
  • 控除される金額は、支払った保険料ではなく、種類ごとに計算した後の金額です。
  • 確定申告されるに方は、国税庁が作成した「確定申告作成コーナー」をおススメします。

【編集後記】

私が税務署に入ったころの生命保険料控除は、計算式を暗記できるレベルでしたが、今はITを使わないと間違えそうで心配です。

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