事業再構築補助金第11回公募の採択率が26.5%となり過去に比べて大幅に下がっています #244

経営のヒント

採択率の推移

12345678910累計11
応募22,22920,80020,30719,67321,03515,34015,13212,5919,36910,821167,2979,207
採択8,0159,3369,0218,8109,7077,6697,7456,4564,2595,20576,2232,437
採択率36.144.944.444.846.150.051.251.345.548.145.626.5

第11回公募の採択率は、26.5%です。1回目から10回目までの平均採択率が45.6%なので△19.1ポイントという大幅な下落です。

応募数も過去最低ですので、当然のことながら採択者数も過去最低です。

なぜこうなったのか、今後の事業再構築補助金はどうなるのか、考えてみました。

事業再構築補助金事務局からの「ご案内」(2023.12.8)

この日に、「事業再構築補助金に係る第12回以降の公募について」という「ご案内」が事業再構築補助金事務局のホームページに掲載されました。内容は、次のとおりです。

本事業は、11月12日(日)に内閣官房行政改革推進本部事務局が実施した「令和5年度秋の年次公開検証(「秋のレビュー」)」において取り上げられ、下記リンク先のとおり外部有識者によるとりまとめが行われております。(コロナ関連)中小企業等事業再構築促進基金取りまとめ第12回以降の公募については、ご指摘を踏まえた見直しを行った上で公募を再開する予定です。
引き続き、事業再構築補助金については、事業状況の検証・分析等を通じた効果測定を行い、中小企業等事業再構築促進基金の政策目標の達成に向けて、適切に実施していきます。

上の「取りまとめ」の内容は、次のとおりです。

従前の枠組みについて、
○ 新型コロナ対策としての役割は終わりつつあるので、基金のうちそれにかかる部分は廃止し、もしくは抜本的に事業を構築し直すべき。
○ 申請書・財務諸表の精査、四半期ごとのモニタリングといった仕組みが確立されない限り新規採択は一旦停止すべきであり、それができない場合は基金として継続する必要は認められないため、国庫返納して通常の予算措置とすべき。
○ 審査の厳格化とデータの収集の厳格化については、引き続き十分な検討が必要である。

財務省公表した「国内投資・中小企業」(2023年10月11日)

この議論の発端は、財務省のこの資料でしょう。

財務省が公表した「国内投資・中小企業」(2023年10月11日)には、次のように記されています。

【参考】事業再構築補助金についての指摘等
○事業再構築補助金については、従来、①強みが異なるはずの複数の事業者がフルーツサンド販売店の展開という全く同内容の計画により採択されており、また、②自販機や無人販売店の急増の要因となっているなどの指摘がある。
○足もと、9月に採択された第10回公募の採択案件約5200件には、「ゴルフ」や「エステ」、「サウナ」に関するものが多数含まれている。

また、この文書の中で財務省は、「コロナ対応のための資金繰り支援措置の多くは既に終了。残る措置についても早期に正常化する必要。」とも記しています。

「秋のレビュー」の議事録(令和5年11月12日)

この議事録は24ページの内容です。事務局の呼び掛けに4人の評価者の方々は、いろいろと発言されており、それは、事業再構築補助金に対してかなり厳しいご意見が多いです。興味がある方は「令和5年度秋の年次公開検証 2日目 コロナ関連 中小企業等事業再構築促進基金」で検索されてください。

このご意見をまとめたのが、上の「(コロナ関連)中小企業等事業再構築促進基金取りまとめ」だと思いますが、議事録では評価者の方々が生々しいやり取りでとても厳しく突っ込んでおられることが分かります。

[吉田評価者]

  • ファンドマネジメントの中でこんなずさんのデータ収集や分析はないです。特に経済政策、ビジネスのプロジェクトだったら、最低四半期です。四半期にデータをチェックしていくのは当たり前です。報告書が出てから分析しますという話ではないです。
  • 何を悠長にそういう指導もできない、フォローアップもできないような状態でやっているのか

[太田評価者]

  • 7万6000件の採択をしてB/S、P/Lを精査して、これを出すのが国民のためだという事業を実行して、その数字を足した数字が出せない。2週間はないですが、1週間あってもできない。
  • コロナパンデミックだから、緊急事態だから正当化できるという議論はあり得るかもしれませんが、普通に考えて相当厳しく事前に審査をして、きちんと四半期でモニタリングしていかなければ、到底有権者と納税者の納得は得られない事業だと思います。1週間で数字が出てこないということは、全くザルであると言われてもしようがないのではないでしょうか。いかがでしょうか。
  • (経済産業省のアンケートで9割方「補助金が無ければその事業をしなかった」ということに対して)9割の方がやらなかったということは、やらないほうがよかった事業なのではないですか。
  • 一番懸念するのは、人手不足にしても何にしても、本来であれば赤字であってやられなかった事業に公金を入れて継続してもらうわけです。本来、中小企業で行われる新陳代謝を阻害している側面が非常に強くて、DXであるとか、その他のRPAであるとか、そういうものが全く進まないように、むしろ中小企業対策をすることによって産業転換を遅らせてしまっている懸念があります。

[川澤評価者]

  • 審査がきちんと行われているか、それを後で再検証する可能性も当然あると思いますので、そこの部分についてのデータの整理も非常に重要だと思います。
  • この段階でこの事業スキームであれば、通常の予算措置に移行する基金としての実施する必要性というのは非常に薄くなっているのではないか。逆に透明性が低下することのデメリットのほうが大きいのではないかと感じます。

[伊藤評価者]

  • もちろん財源を取っておくということで、当時の緊急度が高かったときはそうだったのかもしれないのですけれども、このタイミングでは基金としてやることの必要性は非常に少ないのではないか。
  • gBizIDを経由することによって事業者の実績はある程度データで取りやすくなるはずなので、ここはやらない選択肢はないのではないかと思っています。

[太田評価者]

  • PDFというお話があったのですが、申請時にウェブで入力してもらうとか、数字で出してもらうようにすることはそんなに難しいですか。
  • B/S、P/Lが作成されていて、PDFになっているのです。その数字をコピーして、ウェブか何かの入力フォーマットに入れられない理由というのは全く理解できません。

[伊藤評価者]

  • コロナ対策としての補助金のメニューは、一旦はここで終了ということを考えていく必要があるのではないかと思います。
  • 事業者側が何かという問題ではなくて、もらえるものはもらったほうがいいと思います。お金を出す側からすると、コロナ対策と物価高騰は違うと思います。分けて考えなければいけないのではないですか。

[太田評価者]

  • 結局、これは財務省にもお願いしたいのですけれども、特に基金事業で補助金事業をする場合は、極めて慎重にやってほしいと思います。先ほど聞いているように、データ収集・分析ができない状態で事業採択をスタートさせるのはおかしいだろうと思います。
  • 先ほど途中のチェックの方法をお話ししましたけれども、普通は事業計画が出てきたら、計画どおりに進んでいるかどうかのチェックなのです。そんなに難しいことではないのです。新しいチェック指標をつくる必要ないのです。最初に厳しい審査をしているのであれば、審査を通った事業計画がベンチマークになるわけです。だから、四半期ごとに数字をもらってチェックしていくというのは当たり前の話です。それでいいのです。データさえきっちり収集して、更新していけるのであれば、いわゆる途中の事業効果を検証できるはずなのです。そこはごまかしのように取ってつけたような手法をつくる必要はないので、とにかくデータ収集をしっかりやっていただかないといけない。
  • 基金事業でこういったことを行う場合は補助金じゃなくて、投資型の資金調達、資金投与をすべきだと思います。ファンドマネジャーをやった経験から言うと、2倍の倍率はあり得ないです。よほど審査のハードルが低くなければ、こんな倍率で採択されるファンドは世の中にあり得ないです。
  • 皆さんが御指摘したように、具体的なデータがあまりにもないので、審査が厳格にされているかどうかも我々は検証できないのですけれども、そこのデータの重要性というのは、今回のレビューはEBPMと名づけてやっているレビューなので、そこは再度認識していただけたらと思います。

[川澤評価者]

  • 先ほどデータをPDFで入力するのは難しいという話があったのですが、国民にe-Taxであるとか、確定申告ですとか、マイナンバー、いろいろな形でデジタル化が求められている中、中小企業に対してだけデジタル化が難しいというところも通用しないのではないかと思います。自己検証できないという意味で、デメリットのほうが国民にとって大きいのではないのか。ですので、そこはそれを理由に進めないというところは、今後なくしていただきたいと思いました。

[河野行政改革担当大臣](議論へのコメント)

  • 大変厳しい御指摘が続きまして、誠にごもっともだと思います。データの収集の部分とか、経産省にもう少し頑張ってできなければいけないものもあると思いますが、真の責任がどこにあるかというと、コロナ禍で政治がある程度押した部分があって、こういう状況がつくられているところが一番の責任なのだと思います。そこはまず基金の成果目標は何なのか、それから、成果目標を達成しているかどうかをきちんと効果検証して、その結果を見て、この手法が本当によかったのかどうなのかというところは問わなければいけない。そのときに問われるのは、政治が責任を問われないと、経産省ばかりを責めるわけにはいかないと思います。
  • (中略)
  • そういう意味で、経産省には力仕事を頑張ってやってもらって、ある面では大変だったと思いますが、政治が始めたことは政治の責任で1回止まって効果検証をやることは、しっかりやらないといけない時期に来ているのではないかと思います。

最後に、大臣が政治の責任を認め、事務方(経済産業省)へのフォローがあったことは、嬉しく思いました。

まとめ

このような経緯で、事業再構築補助金の審査が厳しくなり、採択率が下がったのかもしれません。この議論の過程の最中だったことから、第11回公募の採択者発表はずいぶん遅れたと思われますし、次の第12回公募もまだされていません(2023.2.18現在)。

今回これらの経緯を調べる中で、事業再構築補助金が継続できるのか心配になってきました。事務局は、第12回以降の公募については、ご指摘を踏まえた見直しを行った上で公募を再開する予定です。と言われていますが、評価者の意見について、どの部分をどう見直すのか、そして今後、この補助金がどうなっていくのか、見守っていきたいと思います。

【編集後記】

2023年秋、ジョギング(10キロ程度)後に膝が強く痛み出し、数日経っても収まりませんでした。そのため、広川町の膝痛で有名なクリニックに行ったところ、「加齢で軟骨がすり減っている。治らない。」と診断され、何の処置もしていただけませんでした。歩くのも難儀するような状態で、年内のゴルフはすべてキャンセル。このままどうなるのか不安な日々を過ごしていました。

私は、福岡市のドクターストレッチに通っていますが、ある日、ストレッチ直後には膝の痛みが和らぐことに気付きました。「(もしかしたらストレッチで治るかも?)」と思い込み、「(あの病院(医者)を見返したい!)」という気持ちで、最近は自宅でも真面目にストレッチしています。

おかげさまで現在は、平らなところをゆっくり歩く程度なら痛みを感じませんし、ゴルフも復活できました。このままストレッチを続け、膝痛が完治することができたなら、「膝痛はストレッチで治ることがある」ことを証明できるのではないかと、自分を研究材料にしている次第です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました