税制改正大綱に登場 存在感が増してきた「クラウド会計ソフト」 #183

税金や会計のヒント

クラウドの定義

私が初めてクラウドという言葉を聞いたのは、2008年(平成20年)頃です。当時クラウドは、ほとんど知られた言葉ではありませんでしたが、NHKのクローズアップ現代でクラウドの仕組みが紹介され、もの凄く興味を持ったことを覚えています。

クラウドの定義は…、ありません。広い意味で使われることもあるし、狭い意味で使われることもあります。

SaaS

私が語る際のクラウドは、SaaS(サース:Software as a Service)のことを指します。DX(デジタルトランスフォーメーション)でも、クラウドはSaaSを前提に語られていることが多いです。

SaaSは、ソフトウェア(アプリケーション)をパソコンにインストールして使うのではなく、クラウド上に置いてあるソフトウェアを使うものです。例えばExcelは、パソコンにソフトウェアをインストールして使います。そのため、そのパソコンがないと使えません。しかし、SaaSはクラウド上にあるので、誰でも使えるし、インターネット環境があればデバイス(パソコン、タブレットなど)を問いません。つまり、パソコンは、ブラウザ(インターネットへの入口)の役割さえあれば良いのです。

申告ソフト会社

「インターネット上にあるクラウド(雲)にデータを保存する」ことをクラウドと呼んでいるベンダー(申告ソフト会社)もありますが、やや認識不足のように感じています。

この場合、従来同様、ソフトを購入しパソコンにインストールして使います。使用するパソコンを限定されますので、使い勝手が悪いです。

私が言うクラウドは、ソフトをインストールしませんので、IDとパスワードさえあれば、パソコンでもスマホでもタブレットでも使えるものです。皆さまがお使いの会計ソフトは、他人のパソコンで使えますか? 使えないならクラウド型ではなく、インストール型のソフトです。

令和3年度税制改正大綱

令和2年12月10日にまとめられた自由民主党と公明党の「令和3年度税制改正大綱」では、「クラウド会計ソフト」という文字が2か所出ています。

2ページ、「令和3年度税制改正の基本的考え方」で、「昨今のクラウド会計ソフトの普及等も踏まえた、適正な記帳の確保に向けた方策を検討していく。」とあります。

また、9ページ、「納税環境のデジタル化」の中の「電子帳簿等保存制度の見直し等」で、「経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、テレワークの推進、クラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上に資するため、国税関係帳簿書類を電子的に保存する際の手続を抜本的に見直す。」とあります。

財務省の「令和3年度税制改正の大綱」を含めて読み解いてみると、クラウド会計ソフトには、大きく2つのことが期待されているようです。

生産性の向上

金融機関やクレジットカードを自動で連携する機能とAIによる取引の推計を使って、記帳作業の生産性を向上させることが期待されています。実際にクラウド会計ソフトを使うと、生産性が飛躍的に向上します。そして、クラウド会計ソフトのシェアが増え続けると、記帳代行というビジネスモデルの将来が心配されます。

記帳水準の向上

コロナのために支給された持続化給付金の申請において、事業者の記帳水準の低さが露呈されるという事態が発生しました。

適正な記帳は、税金の申告だけではなく、意思決定の迅速化、資金調達などに有用です。

そして、事業の発展は、日本全体を強くしますので、政治的にも取り組むべき課題ということです。

まとめ

ここで特筆べきは、税制改正大綱は、「会計ソフト」と言わず「クラウド会計ソフト」と言っている点です。もともと「会計ソフト」は数多ありますが、「クラウド会計ソフト」はまだ数社で、ここ10年程度で飛躍的に発展してきた技術です。この両者の違いを理解して記述されていることに、「存在感」が表れています。

「会計ソフト」はそれなりに便利ですが、詳しい簿記の知識が必要です。「クラウド会計ソフト」も簿記の知識は必要ですが、ソフトが自動的に仕訳をしてくれるので、それをチェックするだけで済みます。そのため、一般の方も導入が容易になっています。

存在感が増してきた「クラウド会計ソフト」です。私のクライアントは、全員freee又はマネーフォワードを使っていただいています。税理士としても、事務所からリアルタイムに記帳を見ることができるので、事務所の生産性も向上しています。

開業時が既に「クラウド会計ソフト」が一般的になってきていた時期であったことに、幸運を感じています。

【編集後記】

先週から、補助金の仕事に着手しています。納期は、来月上旬です。今日は、ハマって取り組みたいのですが、午後からクライアントの所への月次訪問があるので、できる限り午前中に集中して行います。

痛風が収まり、今朝から、朝食前のジョギングを再開しました。1キロ8分ペースのゆっくりとしたジョギングでしたが、結構汗をかきました。朝食後に浴びたシャワーのおかげで、今、頭はスッキリしています。事業計画書の読み込みに集中できそうです。頑張ります!

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