配当控除(減税)に目が眩み 実はトータルで減税にならない場合 #93

税金や会計のヒント

配当控除とは

上場株式等をお持ちの方は、配当を受け取られている場合があります。配当は、法人税が課税された残りの利益から配られます。そのため、所得税としてそのまま課税すると、法人税との二重課税となってしまいます。

そこで、これを調整するために、受け取った配当金の10%(または5%)が算出された税額から控除され(引かれ)ます。

税率にもよりますが、配当控除を適用した場合、多くの方に還付金(所得税が戻る)が発生いたします。

配当所得の申告

配当所得は、自己の選択で3通りの申告方法ができます。自分にとって最も有利な方法を選択することが可能となっています。どれを選ぶのかは、ご自身で判断していただきますが、顧問税理士がいらっしゃる方は、税理士が有利な方法を選択してくださっていると思います。

[出典:国税庁ホームページ]

なお、配当控除が使えるのは、一番右の「総合課税」を選択した場合のみです。

住民税と国民健康保険

「税金が戻るなら、総合課税を選択するのが一番良いのでは?」と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

地方公共団体は、誰がいくら配当を貰っているか分かりません。そのため、配当控除を受けるために税務署に申告すると、その情報はお住まいの市町村にデータが渡されます。

その情報から地方公共団体は、住民税と国民健康保険の金額を算定します。つまり、配当所得を申告しなければ(申告不要制度があるので脱税ではありません。)、配当部分の所得については、住民税と国民健康保険の算出根拠に入りません。(正確にはこれら以外にも影響があります。)

そのため、トータルで考えた場合、負担が増える場合が往々にしてあります。

平成28年以前

過去は、配当所得を申告した方がトータルで得なのか損なのか、それぞれ計算してから選んでいました。特に、国民健康保険や後期高齢者保健は、所得が増えるとかなり負担が大きくなりますので、何度も検算して慎重に選んでおりました。そのため、「去年は配当所得を申告したけど今年はしない」ということもありました。

この年までは、何度も計算し直して確認する作業が大変だったことを記憶しています。

平成29年以降

国の所得税と異なる課税方式により個人住民税を課税できることが明確になりました。

これにより、所得税では総合課税または申告分離課税、個人住民税では申告不要制度を選択するなど、申告者自身が課税方式(前述の3通りの申告方法とは更に別)を選択することができます。

具体的には、個人住民税で申告不要制度を選択すると、配当金から徴収されている住民税分5%の源泉徴収で課税関係が終了し、扶養控除等の適否を判定する所得金額の合計額には算入されません。また、国民健康保険料の所得割の算定基礎となる所得金額の合計額にも算入されません。なお、後期高齢者医療保険料も同様です。

今年、配当所得が収入のメインである方の申告書を作成しました。この方の健康保険は、後期高齢者保険です。所得税は、配当控除を利用し数十万円の還付金を受け取るとともに、個人住民税は申告不要制度を選択しました。

本来、所得税の確定申告をすれば住民税の申告も兼ねているので、住民税の申告は不要です。しかし、このように課税方式を別にする場合は、別途住民税の申告が必要です。

筑後市の場合、住民税申告書の配当所得欄に「(申告しない)」とはっきりと意思表示をすれば結構です。

地方公共団体によっては、別途届出書や申出書の提出を求められる場合がありますので、ホームページなどでご確認ください。

税理士に依頼する場合は、別途、それぞれの場合のシミュレーションの計算や住民税申告書作成のための報酬を支払う必要があると思いますが、それ以上のメリット(還付金)があると思われる場合は、選択されてください。

まとめ

上場株式等に係る配当所得等がある方は、所得税の申告において3つの申告方法を選択できます。

配当所得は、所得税の申告と住民税の申告で、別の課税方式を選択することができます。

節税(支出を減ら)したい方は、国民健康保険料や後期高齢者保険料などを含めてトータルで計算してみてください。

【編集後記】

この選択、専門家でも知らない方もいらっしゃるようです。

私も、僅かですけど配当所得があります。職場を退職し、今年から国民健康保険になりますので、自身の申告もこれを使う予定です。

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