どうやったら税務調査を免れることができますか? 税務署が調査に来ない方法はありませんか?
『税務署はいつか来るもの』と考えておいてください。
どんな会社(事業者)が調査に選ばれるのですか?
税務署はさまざまな情報から総合的に判定します。調査に来られても、正しい申告をしておけば、心配することはありませんよ。
よくある質問
私が税務署OBだからかと思いますが、よく、税務調査について聞かれることがあります。
どのような事業者が選ばれるかは、税務署内でさまざまな視点から検討されてからか決まります。ちなみに、税務署は口が堅い官庁ですので、誰が調査されるか漏れることは、まずありません。ある日突然、電話で通知があるか、もしくは通知なしで乗り込んでくるかのいずれかです。
なお、税理士と顧問契約している方で一定の手続きをされている場合は、税理士を通じて通知されます。
税務署OBの口利き
一般の方は、顧問税理士を税務署OBにしておけば、「どうにかしてくれる。」と期待されるかもしれません。
税理士が税務署OBだから「調査を控える」とか、調査になっても「手心を加えてくれる」は、ありません! 仮に、自分でそのようなことをアピールしている税理士と契約したら、あなたは騙されています!(たぶん)
税務署は、どちらかと言えば体育会系ですので、先輩後輩の絆は強いです。そのような中で、後輩に面倒をかけるような先輩は、いません!(と思う)
実際に、現職時代にそのような圧力を受けたことはありません。私もしません。後輩に後ろ指を指されたくもありません。自分の主義主張そして生き様を否定することになります。
政治家の口利き
「政治家(国会議員)に頼めば何とかしてくれる。」と思われる方も世の中にはいらっしゃるかもしれませんが、税務署側は「政治家に頼むぐらいだから悪いことをしているのは確実だ。」とかえってモチベーションを上げるだけです。政治家にビビる組織ではありません。
そもそも現代において、政治家側も、「税を免れるための口利き」をしたことが分かれば、政治生命を絶たれるおそれがあり、税務署に圧力をかけてリスクを負うようなことは考えにくいです。テレビドラマとは違います。文春砲で暴露され、謝罪会見と引退ということになりかねません。
政治家にお礼(追加の政治献金)をするぐらいなら、追徴された税金があれば、きちんと納めましょう。
調査結果データ
国税庁が発表している令和元年度分の税務調査の結果は、次のとおりです。
税目 | 調査件数 | 非違件数 | 非違割合 | 1件当たり 申告漏れ所得 | 1件当たり 追徴税額 |
所得税(特別・一般) | 42,601件 | 38,0345件 | 89.3% | 1,190万円 | 222万円 |
消費税(個人) | 23,837件 | 20,191件 | 84.7% | ー | 111万円 |
譲渡 | 13,221件 | 10,001件 | 75.6% | 836万円 | ー |
相続税 | 10,635件 | 9,072件 | 85.3% | 2,866万円 | 641万円 |
法人税 | 約76,000件 | 約57,000件 | 約75.0% | 1,023万円 | 216万円 |
消費税(法人) | 約74,000件 | 約44,000件 | 約59.5% | ー | 98万円 |
この数字を見てみると、個人事業主(消費税課税事業者)の場合1件の調査で平均333万円の追徴税額が発生し、法人(消費税課税事業者)の場合平均314万円の追徴税額が発生しています。
勘違いしないでいただきたいのが、税務署がまじめに正しく申告している方から無理に税金を追徴する、ということは決してありません。
またこの表を見て、事業者の多くがこのように申告漏れがあると、勘違いされないでください。多くの納税者は真面目に申告されています。この数字は、税務署が選びに選び抜いた対象のみの調査結果です。ランダムに調査対象を選んだら、このような結果にはなりません。
調査協力
調査を心配する気持ちは分かります。私も、自動車運転中にパトカーを見たら、何も違反はしていないのに、少々緊張します。
中には、抵抗する方もいらっしゃいます。抵抗したら税務署が引き下がるならやる意味はあるかもしれませんが、そのようなことはまずありません。前述のとおり、「抵抗する(調査に協力しない)なんて怪しい。」と思われるのが関の山です。
以前、私の部下が、予告なしに突然調査に臨場した店では、店主の方が、「本当に税務署っていきなり来るんですね。どうぞ、どうぞ。」と招き入れ、調査に積極的に協力してくれました。そして、その日に不正な点は見当たらなかったとのことです。
その復命を聞いた私は、「その調査は、早めに終了しなさい。」と指示しました。
調査が長引くことにより、ストレスも長引きます。後ろめたいことがないのであれば、さっさと調査に協力して、さっさと終わっていただきましょう。
申告是認
調査は、ある程度、税の追徴を想定して臨みますが、必ずしもそのような結果が出るとは限りません。まじめに申告されていた場合、当然のことながら、追徴税額なしに調査が終了します。これを俗に、申告是認(しんこくぜにん)と呼んでおります。
そして、調査の終了の際の手続として、国税通則法第74条の11第1項において、次のとおり定められています。
税務署長等は、国税に関する実地の調査を行つた結果、更正決定等をすべきと認められない場合には、納税義務者であつて当該調査において質問検査等の相手方となつた者に対し、その時点において更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知するものとする。
「更正決定等」とは、税務署長等の権限において、追徴税額を決めることです。そうするものがなかったら文書で通知するというものです。
「その時点において」とは、もしも後日、「更正決定等」をする必要が出てきた場合は、「更正決定等」をしますよということを宣言しています。同条第6項において、税務署長等に再調査の権限を与えています。
税務調査と税理士
税理士は、その知識と経験から、調査対象者の方にとっては、税務署と交渉してくれる頼れる存在です。その中でも、税務署OBの税理士は、特に頼られていると聞いています。
OBは税務署側に居たわけですから、調査担当者が「なぜそのような質問をするのか。」「何を考えているのか。」「どのような展開を目指しているのか」などへの勘は、確かに働きやすいことでしょう。
ネットで検索してみると、税務署OBであることをアピールして税務調査対応に特化したような税理士も見受けられます。顧問税理士とは別に、調査の対応のみの契約になるのでしょうか。
ちなみに、税務調査への立会いは、法律により、報酬の有無に関わらず、税理士以外の方が行うことはできません。
【編集後記】
私は、未だ、調査立会いをやったことはありません。早く、後輩の調査を目の前で見てみたいです。
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