所得税の確定申告書のあちらこちらにある「区分」欄について調べてみました #106

税金や会計のヒント

様式の規定がない所得税法

所得税の確定申告書は、様式の規定がありません。あるのは、「〇と□と△という項目(数字)
を書いた申告書を出しなさい。」とだけです。法人税法には規定があります。なぜ、いまだに所得税法はこうなのか、私には謎です。

そのため、若いころ、税務署の先輩から、「トイレットペーパーに書かれた申告書でも受け付けないといけないぞ。」と教えられていました。実際にトイレットペーパーの申告書には出会うことはありませんでしたが、便箋に書かれた申告書は、一度だけ見たことがあります。

もちろん、規程がないから「ご自由に」となると納税者の方も困るでしょうから、国税庁では様式を作って公開しています。

(注)「ここに規定がある!」とご指摘があれば、謝罪してブログを訂正しますので、ぜひご連絡ください。

青色申告書

現在の様式は、「青色申告」でも「白色申告」でも同じ様式を使いますが、昔の青色申告書は、本当に青色でした。と言っても、どちらかと言えば緑に近かったような記憶が…。まあ、色調としては「緑」も含めて「青」ですので、間違いではありません。LEDになる前の青信号も「緑」でした。

ちなみに、所得税法に「青色申告」という言葉はありますが、「白色申告」という言葉はありません。つまり、「白色申告」は、俗語です。

申告書で見かける「区分」欄

以上は、雑学の分野でしたが、以下は、マニアックな話です。専門家以外には興味がないことでしょう(専門家でも興味がないかもしれません。)。

申告書Bには、「区分」欄がたくさんあります。ここは何を意味するのか、一つ一つ勉強してみました。なお、文章は、「令和2年分所得税及び復興特別所得税の確定申告書の手引き(確定申告書B用)」から引用しています。

収入金額等(2か所)

給与所得の「区分」欄

給与収入が850万円~1,000万の方が使用します。今年から作られた「所得金金額調整控除」というものがありますが、これに該当する場合、「1」、「2」、「3」のいずれかの数字を書き込みます。

「1」…「あなたの給与等の収入金額が850万円を超え、あなた、同一生計配偶者若しくは扶養親族のいずれかが特別障害者である場合、又は23歳未満の扶養親族がいる場合

「2」…「あなたに給与所得と公的年金等の雑所得がある場合で、給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等の雑所得の金額の合計額が10万円を超える場合」

「3」…「1」と「2」の両方に該当する場合

雑所得の業務の「区分」欄

手引きには「区分欄は記入不要です。」と書かれています。書かなくてもいいのになぜ欄があるのか。

これは私の想像ですが、令和4年から雑所得の業務がある方には帳簿の備付けの義務化がスタートしますので、その区分のために設けられた欄でしょう。

昔の申告書は、年度ごとに様式が別でしたが、現在(例えば今年)の申告書は、「令和2年分以降用」とされています。令和4年以降に使用することを見据えた欄と考えられます。

所得金額等(1か所)

給与所得の「区分」欄

給与所得者の特定支出控除を受ける場合のみ記入します。給与所得者が各年において特定支出(①通勤費、②職務上の旅費、③転居費(転任に伴うもの)、④研修費、⑤資格取得費(人の資格を取得するための費用)、⑥帰宅旅費(単身赴任に伴うもの)及び⑦勤務必要経費をいいます。)をした場合において、その年中の特定支出の額の合計額が一定額を超えるときは、特定支出控除の適用を受けることができます。

手引きにはこのように書かれていますが、3つある欄に、それぞれ何を書いてよいのか分かりません。この書き方だと、特定支出の1~7のうち必要経費とした数字を入れるのでしょうか? 国税庁ホームページでも調べましたが分かりません。ご存じの方がいらっしゃったら教えてください。

所得から差し引かれる金額(4か所)

寡婦、ひとり親控除

寡婦控除とひとり親控除を一つの欄で使用しています。そのため、ひとり親控除の方を受ける場合に「区分」欄に「1」を記入します。

配偶者(特別)控除「区分1」

配偶者特別控除を適用する場合に、「1」と記入します。

配偶者(特別)控除「区分2」

配偶者が国外居住親族で、かつ、年末調整においてこの控除の適用を受けている場合は「1」を、この控除の適用を受けていない場合は「2」を記入します。

扶養控除

扶養親族に国外居住親族がおり、その国外居住親族の1人以上について年末調整においてこの控除の適用を受けていない場合は、「1」を記入します。また、その国外居住親族の全員についてこの控除の適用を受けている場合は、「2」を記入します。

医療費控除

医療費控除において、セルフメディケーション税制による医療費控除の特例を選択する場合は、「1」と記入します。

税金の計算(4か所)

「㉝(数字の33に丸囲み)」欄

事業を営む方が、中小企業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除など、事業所得等の特例に係る税額控除の適用を受ける場合には、左側空欄に「投資税額等」、「区分」に「1」と記入し、控除額を記入します。

さまざまな特例がありますので、項目欄が空欄になっています。

(特定増改築等)住宅借入金等特別控除

「区分1」は、東日本大震災の被災者の方が、適用期間の特例や住宅の再取得等に係る住宅借入金等特別控除の控除額の特例又は重複適用の特例の適用を受ける場合、『東日本大震災により自己の所有する家屋が被害を受け居住の用に供することができなくなった場合に住宅借入金等特別控除等を受けられる方へ』を参考に記入します。数字は、「8」と「9」があります。

給与所得者が、既に年末調整でこの控除を受けた金額を記入する場合には、「区分2」に「1」を記入します。

住宅耐震改修特別控除等

一つの欄で複数の控除に使用しているために、「区分」欄が設けられています。

「1」…住宅耐震改修特別控除の場合

「2」…住宅特定改修特別税額控除の場合

「3」…認定住宅新築等特別控除の場合

「4」…複数の控除がある場合

これを書いていましたら、国税庁ホームページのミス(誤植)を見つけました!

ここには、上の「3」を記入すべきところ「4」と書かれています。

さっそく、国税庁へメールしました。回答してくれるかな?

※ 2022/2/3に確認したところ、訂正されていました。

外国税額控除等

「1」…外国税額控除のみ適用があり、かつ、外国税額控除が復興特別所得税から控除されている場合

「2」…分配時調整外国税相当額控除のみ適用があり、かつ、分配時調整外国税相当額控除が復興特別所得税から控除されている場合

「3」…外国税額控除及び分配時調整外国税相当額控除の両方の適用があり、かつ、どちらかの控除(又は両方の控除)が復興特別所得税から控除されている場合

【編集後記】

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