freeeとマネーフォワード
家族が経営している卓球センターは、マネーフォワードを使って私が記帳しております。そこで、私の事業所得の方はfreeeでやることにしました。
freeeとマネーフォワードは共にクラウド会計ソフトですが、そのコンセプトが違います。両方使った者として、クライアントには、簿記の知識があればマネーフォワード、なければfreeeをお勧めするでしょう。
私たち税や会計に携わる人間は、お金のやりとりを、頭の中で簿記の「仕訳」という作業により表現しております。マネーフォワードは、どちらかと言えば簿記に忠実という感じです。一方freeeは、簿記の知識がなくても使えるように設計されていますので、私の頭を柔らかくして臨む必要があります。
青色申告
青色申告という言葉は、聞かれた方もたくさんいらっしゃるでしょう。
事業で収入がある方は、原則として確定申告が必要です。そして、その確定申告では、何も手続きしなければ白色申告者、青色申告承認申請書を提出して税務署長に認められれば青色申告者になります。
青色申告承認申請書は、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合には、その事業開始等の日から2月以内。)に提出しなければ認められません。
私の場合は、開業を9月1日としましたので、その直後、国税電子申告・納税システム(通称e-Tax)により提出しました。
ところが、国税庁ホームページには、青色申告承認申請書の提出方法のところに「申請書を作成のうえ、持参又は送付により提出してください。」と書かれています。紙での提出のみのように読めるのですが、e-Taxでの申請でも認めていただけるのでしょうね?
さて、多くの方がこの青色申告を選択されますが、これは、税制上のさまざまな特典(合法的な節税ができる。)があるからです。もしも、自分の申告の作成をお願いしている方が青色申告を勧めない方でしたら、別の方に乗り換えた方が良いかもしれません。白色申告のままでは、融資においても不利になることが予想されます。
青色申告特別控除
前述の特典の一つで、多くの方が利用されているのが、青色申告特別控除です。要件を満たせば、所得金額から最高65万円又は10万円を控除(差し引くこと)できます。
ときどき勘違いされている方がいらっしゃいますので、説明します。この65万円又は10万円という数字は、この金額分税金が安くなるのではありません。税金を計算する際の所得金額(儲け)から差し引く制度です。したがいまして、儲けがなければ控除は受けられません。
例えば、税率が10%の方(人によって税率が違います)でしたら、65万円×10%=6万5千円の節税です。地方税も10%ですから、合計13万円の節税になります。結構な金額なので、できる限り利用しましょう。
満たすべき要件の一つが、貸借対照表を作成することです。貸借対照表とは、ある時点での資産と負債を表したものです。
貸借対照表を作成するためには、事業を始めたときの資産(現金・預金や物)や負債(借入金など)の額を確定しなければなりません。私で言えば、9月1日開業ですので、8月31日から9月1日に変わる瞬間の残高です。
freeeでの操作は、[設定]→[初期設定]→[開始残高の設定]と入ると貸借対照表を入力する画面が現れます。
現金(資産の部)
これは簡単です。いくらでなければならないというものはありませんので、事業用の財布に入れた現金を入力しました。
なお、正確に記帳するためには、プライベートの財布と事業用の財布は別に用意しておきましょう。
預金(資産の部)
事業用に口座を開設しておりましたし、ネットバンキングを使っておりますので、これも簡単です。
まず、freeeと銀行口座を連携させます。ネットバンキングのIDとパスワードがあれば、すぐに連携できます。自動的に残高も入りました。
この口座連携は、記帳を効率化するためにも重要です。以後の取引が自動的にfreeeに取り込まれ、AI(人工知能)がその取引を推計して記帳してくれます。しかもAI(人工知能)は、自分で学習してくれるので、使えば使うほど精度が高くなってまいります。
こちらも、現金や後述するクレジットカードと同様に、プライベートの口座と事業用の口座は別にしておきましょう。ごっちゃにしておくと、後々、それを振り分ける作業が大変です。
建物(資産の部)
事務所開設に当たって、三協フロンテアのユニットハウスを設置しました。3坪しかありませんが、かえって隠れ家みたいな気分で楽しく、いつもこもっております。
ユニットハウス代金に工事代を加えた額を入力しました。
なお、この額は、決算時には減価償却資産として一定の計算が必要です。
開業費(資産の部)
建物以外の、開業するためにかかった費用を合計して入力しました。創業補助金を請求するためにも必要でしたので、支払った都度、Excelで管理しておりました。
開業費は、今年の経費にしなければならないものではありません。5年間で均等に経費に入れていくのが一般的ですが、任意にいつでも経費にしてもよいのです。私は、今年と将来の収入を考慮して、今年一括して経費にする予定です。将来の変化は完全には予想できませんが、現時点では、これが最も節税効果が高くなるでしょう。
前払費用(資産の部)
7月、ユニットハウス設置後に火災保険に加入しました。火災の心配はほとんどないのですが、事務所の南側は茶畑と田んぼしかなく、台風が心配でした。
3年契約で一括支払いでしたので、33か月分はまだ経費にできません。そのため、前払費用として計上し、3年間で均等に経費にするためにここに計上しておくのです。
長期借入金(負債の部)
開業に当たって、日本政策金融公庫から創業資金を借り入れました。半年返済据え置きで借りましたので、借り入れた金額と返済すべき残高が同じです。借りた金額を入力しました。
クレジットカード(負債の部)
開業費として出費したものの多くは、クレジット払いです。そのため、開業前に利用した分のうち、9月以降に引き落とされる分を未払金として入力しました。このクレジットカードも事業専用とし、プライベートのクレジットカードとは別にしております。
クレジットカードもfreeeと連携させました。銀行口座の連携同様、IDとパスワードがあればものの1分もかからず連携されます。今後、クレジットカードで支払った取引は、自動的にfreeeに取り込まれ、こちらもAI(人工知能)がその取引を推計して記帳してくれます。
お気づきかもしれませんが、事業における入金を銀行への振込、出金も銀行からの振込又はクレジットカード払いのみにすれば、基本的に、自動で帳簿が作成されていきます。現実には、現金でしか支払えない店があるので100%とは行きませんが、それでも大幅な効率化が可能です。
元入金(資本金の部)
法人(株式会社)で言う資本金のことを、個人事業主では元入金と呼んでおります。
元入金の計算も簡単です。資産の部の合計から負債の部の合計を引けば元入金となります。それを入力しました。
期首の貸借対照表の完成
これらの金額の入力が済みましたので、期首(事業開始の日)の貸借対照表が完成しました。この作業は、事業をやっている間、1回限りの作業です。少し専門知識が必要ですので、ここは専門家に頼った方が良いかもしれません。なお、以後は、期中(今年度の事業を行っている期間)の記帳に間違いがなければ、自動的に期末(事業を行った年の最終日)の貸借対照表が完成します。
ただし、実際には、期末に会計上の調整をする必要があり、これにも一定の簿記会計の知識が必要です。でも、毎年同じような事業を行っていく場合は、その調整も同じ事の繰り返しになることでしょう。経理に強くなるためには、ここの計算の仕方も覚えると数字に強い経営者になれますので、お勧めです。
まとめ
- 青色申告者となり65万円の特別控除で合法的な節税をしましょう。
- 控除を受けるには、事業開始時に貸借対照表を作成しなければなりませんが、簿記会計の知識が必要です。しかし、これは、1回限りの作業です。
- 期中の取引は、クラウド会計ソフトを使って効率的に記帳していけば、期末の貸借対照表は自動的に作成されます。ただし、期末には、決算調整という作業を加える必要があります。
- 決算調整にも簿記会計の知識が必要ですが、毎年同じような作業なので、マニュアルを作れば自分でできるようになります。
【編集後記】
今日は、2件のセミナーを受講します。1件はzoomによるオンラインセミナー、もう1件は商工会議所でのセミナーです。両セミナーとも、中小企業診断士として経営の勉強のために受講します。
いろいろな引き出し(知識)を持っておくことで、人様のお役に立ちたいものです。
〈昨日の健康〉
休肝日と決め、禁酒いたしました。
ジュニア(卓球クラブ)の子どもたちの練習相手をしました。
[昨日の感謝]
私の融資の担当者であった日本政策金融公庫の方が、「近くまで来ましたから」と、ご挨拶に来てくださいました。マスクを着用されていたのでどなたか気付かず、すみませんでした。公庫は、新型コロナの対応で多忙を極めていると伺っております。事業をされていない国民の方はご存じない存在かもしれませんが、新型コロナで困っている事業者を陰で支えておられる方々です。(感謝!)
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