インボイス導入で考える② 免税事業者の益税と損税 #224

税金や会計のヒント

免税事業者とは

2年度前の売上が1,000万円以下の事業者は、原則、免税事業者(消費税を納める義務がない)です。

そのため、本来納めるべき消費税が事業者の手元に残ることとなり、利益が発生します。これが、いわゆる「益税」と呼ばれているものです。

ちなみに、「益税には、法人税や所得税の計算上、益金(収入)の対象です。

なお、2年度前の売上が1,000万円以下の事業者であっても、免税事業者となることを放棄し、自らの判断で課税事業者になることも可能です。

消費税の仕組み(現行)

企業(課税事業者)は、受け取った消費税から事業活動において支払った消費税を引いた残り(差額)を国に納付します。

例えば、年間売上が80,000,000円でしたら消費税10%8,000,000円を上乗せし、合計88,000,000円を取引先からいただきます。

他方、仕入や経費(消費税法では両方合わせて「仕入」と呼んでいます。)に50,000,000円使った場合に10%5,000,000万円を上乗せし、合計55,000,000円を支払います。

この場合、納めるべき消費税は、いただいた8,000,000円ではなく、8,000,000-5,000,000=3,000,000円です。

このとき、仕入に消費税を上乗せして支払った先が全員免税事業者で、実際は国に消費税を納める義務がない場合であっても、5,000,000円を引くことができます。本来、社会保障に使われるはずだった消費税8,000,000円のうち、5,000,000円がどこかに消えて無くなったイメージです。

消費税の仕組み(インボイス導入後)

インボイスが与える影響の最たるものが、企業(課税事業者)が納める消費税を計算する際に、免税事業者に支払った消費税(相当額)が引けなくなることです。

インボイス(適格請求書等)とは、「仕入先(自分の直前の取引者)が消費税を納税していることを証明する書類」です。したがって、企業(課税事業者)にとっては、インボイスは「(現金と同等の価値がある)金券」と同じです。

今までは、納税義務がない免税事業者からの仕入についても、仕入税額控除を認められてきました。しかし、令和5年10月からは、免税事業者はインボイスを発行できません。前述の計算であれば、企業(課税事業者)は、8,000,000円-0円=8,000,000円の消費税を納付しなければなくなります。

取引の現場での予想

インボイス導入後は、モノやサービスを購入する立場の企業(課税事業者)が取引先に対して、次のように行動するだろうと予想されています。

①消費税分の値引きを求める

これは、分かりやすいです。「あなたは課税事業者ではない(自分が払った消費税は国に納めない)から、消費税は払わなくてもいいでしょう。」という主張です。

今までこの取引先に支払っていた消費税相当分は、納める消費税から控除できませんので、自社にとっては納税額が増加しますので、当然の考えかと思います。

②取引から免税事業者を排除し課税事業者のみと行う

今までは、免税事業者Aから税込み110,000円で購入していたけど、同じ商品が税込み110,000円なら課税事業者Bから購入しようという考えです。Bから購入すれば、消費税分の10,000円がお得になります(消費税納税額が減少する。)から、企業(課税事業者)としては自社の利益のためにそちらを選ぶことが自然です。

③課税事業者となることを求める

免税事業者に対して、「今までと同じように取引するから、課税事業者になってほしい。」と要求することです。

企業(課税事業者)にとっては、免税事業者が課税事業者になってもらえば、今までと同じように取引することができます。

一方免税事業者は、課税事業者になることによって、今まで「益税」となっていた部分を放棄することになり利益が減少します。それでも取引を継続したい場合は、この選択をすることもあるでしょう。

なお、この場合、「課税事業者になることを慫慂(しょうよう)する」行為は、公正取引委員会は、「課税事業者が、インボイスに対応するために、取引先の免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請することがあります。このような要請を行うこと自体は、独占禁止法上問題となるものではありません。」(免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A)と明言しています。

しかし、同Q&Aでは、「優越的地位の濫用」に当たる場合も例示されているので、取引先との交渉の際には、十分ご注意ください。

値引き交渉

上の①は、値引き交渉です(適切な値引き交渉は、公正取引委員会も違反とはしていません。)。

この際に、企業(課税事業者)は、免税事業者Aに対して、「今まで税込み110,000円だったのけど、消費税分10,000円を値下げしてほしい。」と交渉を持ちかけるかもしれません。

企業(課税事業者)にとっては当然の理屈かもしれませんが、免税事業者Aは、モノやサービスを提供する過程において自身も消費税を支払ってきています。今まで請求していた10,000円のうち60%の6,000円がそうであるとすれば、10,000円値引きしたら自分が消費税6,000円負担し誰にも転嫁できなくなります。これが、いわゆる「損税」です。

したがって免税事業者は、値引きには応じる場合であっても、100,000円ではなく106,000円にしてほしいと要求するでしょう。公正取引委員会も、企業(課税事業者)が6,000円を含めた10,000円の値引きを要求し、かつ、その交渉が形式的なものである場合は、「優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題になります。」と言っています。

さて、4,000円の値引きまとまれば良いのですが、企業(課税事業者)にとっては、残りの6,000円は、他の課税事業者との取引に比べて余計に負担することになる金額であり、納得はできないでしょう。

となれば、企業は、前段の「取引の現場での予想」の①は現実的にはあまり採用されず、まず③を要求し、課税事業者にならないのであれば②という行動を採るのではないでしょうか。

いろいろな条件があるのですべてがこうなるとは言えませんが、大きな流れはこうではないかと、私は予想しています。

【編集後記】

あるベンダーから、入力システム営業の封筒が届きました。

そのシステムは、「レシートや領収証、通帳などに記載された文字情報(活字)を認識し、日付や金額はもちろん、取引内容や消費税率など、仕訳生成に必要となる情報を自動で抽出」するそうです。OCRで読み込んで入力を自動化するシステムです。

大変失礼かもしれませんか、「いまどき?」と思いました。私にとってはOCRで読み込む作業自体が非効率と考えています。

現状維持バイアスがかかっているのか、サンクコストに固執しているのかは不明ですが、もっと先の技術を目指さないと、このベンダーは生き残れないのでは? と心配している次第です。

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