クライアントからの質問
先週、クライアントの事務所を訪問した時に、次のような質問を受けました。なお、質問者は、個人事業主です。
遠方の同業者から、使用から20年経った中古の機械装置を購入した。
費用は、本体価格40万円、輸送費20万円の合計60万円である。このうち、輸送費20万円について、減価償却資産の取得価格に含めずに、今年の必要経費に入れてよいか。
回答
口頭ではその場で回答していましたが、根拠を含めて以下のとおり、文書で回答しました。お互い、記録が残る方が良いので、私はそうしています。
輸送費については、減価償却資産の取得価格に含めなくてはなりませんので、輸送費だけを今年の必要経費に算入することはできません。
根拠
所得税法施行令第126条(減価償却資産の取得価格)~抜粋~
減価償却資産の第百二十条から第百二十二条まで(減価償却資産の償却の方法)に規定する取得価額は、別段の定めがあるものを除き、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に掲げる金額とする。
一 購入した減価償却資産 次に掲げる金額の合計額
イ 当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(関税法第二条第一項第四号の二(定義)に規定する附帯税を除く。)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
ロ 当該資産を業務の用に供するために直接要した費用の額
これは、「購入した」場合の取得価格です。所得税法施行令第126条には、他にも4通りの取得方法ごとに取得価額に含まれる費用が決められています。
いずれも、基本的には、関連する費用は取得価格に含めなくてはなりません。
取得価格に含めないもの
所得税法基本通達37-5では、
業務の用に供される資産に係る固定資産税、登録免許税(登録に要する費用を含み、その資産の取得価額に算入されるものを除く。)、不動産取得税、地価税、特別土地保有税、事業所税、自動車取得税等は、当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入する。
となっており、これらは取得価格に含めません。
なお、ここの部分は、取得価格に含めるか、必要経費に含めるのかを選択できる法人税とは少し取扱いが違っています。
平4.5.13、裁決事例集№43 154頁
裁決事例集の中で、次のような裁決を見つけましたので紹介します。
本件租税公課等の額は、固定資産の取得に伴い支払われる登録免許税、登録手数料及び不動産取得税の合計額であるところ、個人の場合、業務の用に供されている固定資産の取得に関して生ずるこれらの租税公課等については、所得税基本通達37ー5により、当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入することとされている。
一方、法人の場合には、法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第3項並びに法人税基本通達7ー3ー3の2《固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示》及び同通達9ー5ー1《租税の損金算入の時期》により、これらの租税公課等は、法人の各事業年度の損金の額に算入するか、固定資産の取得価額に算入するかを選択できることとされている。
ところで、当該固定資産をその取得の年分から不動産貸付けの業務の用に供して不動産所得を得ているような場合、上記の租税公課等は、当該固定資産の取得に要した費用としての性質を有するとともに、不動産所得に係る収入金額を得るために直接要した費用としての性質を有するものと解されるところ、上記所得税基本通達は、法人税基本通達とは異なり、これらの租税公課等を個人の意思により当該固定資産の取得価額に算入するか業務上の必要経費に算入するかについての選択を認めていない。
これは、所得税法が対象とする個人の場合には、各種所得の収入金額及び必要経費についての記帳が十分でない実情にあることから、これらの租税公課等の会計処理を個々の納税者の選択にゆだねることなく、各種所得の金額の計算上画一的に取り扱うこととしたものであって、所得税の課税の公平からみて相当なものと認められる。
そうすると、これらの租税公課等については、一律に、当該固定資産の取得価額かあるいは業務上の必要経費として各種所得の金額の計算上考慮することになるわけであるが、固定資産の中には減価償却が認められていない土地などが含まれていることなどを考慮すると、将来の発生が不確実な当該固定資産に係る譲渡所得の金額の計算上取得価額として控除するよりも、業務上の必要経費として早期に各種所得の金額の計算上控除する方が、納税者にとっての一般的利益に合致するものであると認められる。
【編集後記】
本日、高齢の母をコロナワクチン接種に連れていきました。あっけなく直ぐに終わり、副反応もありませんでした。
ネットで予約したので、前日に、通知メールが参りました。ありがたいことです。
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