不動産所得はその規模により必要経費が異なります #74

税金や会計のヒント

不動産所得とは

所得税法では所得は、その収入(所得)の性格から、10種類に分類されています。それぞれの所得で、計算方法や必要経費の対象も違ってきます。

事業所得や給与所得というのは何となく分かると思いますが、不動産所得はいかがでしょうか。

ときどき勘違いされるのが、不動産の売買による所得です。これは、譲渡所得という範疇に入ります。また、不動産屋さんの所得とも思われがちですが、それは事業所得です。

不動産所得とは、所得税法第26条に次のように規定されています。

不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機の貸付けによる所得をいう。(抄)

不動産を貸した所得で、アパートの貸付けや月極め駐車場などが該当します。

事業的規模と業務的規模

さきほど「所得により必要経費の対象が違う」と申し上げましたが、不動産所得は、その所得の中で更に分かれ、不動産貸付が事業として行われているかどうかによって、その取扱い(必要経費の算入)が異なります。

なお、事業として行われているものを「事業的規模」、そうでないものを「業務的規模」と呼んでいます。

専門家でもたまに、「事業的規模だから事業所得」と間違えられる方がいらっしゃいます。税務職員の研修でも、テストでよく、引っ掛け問題として出題されます。

では、事業的規模はどのくらいの規模かというと、法律には書いてありません。そのため、個別に判断するのですが、実務においてはそれでは混乱するので、国税庁は、次のように通達を発しています。

  • 貸間、アパートについては、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること
  • 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること

このルールを、私たちは、「5棟10室」(ごとうじっしつ)と呼んでいます。

ちなみに月極め駐車場の場合は、この「5棟10室」の賃料と比較して、規模を判定しています。

必要経費の違い

所得税法は、事業的規模と業務的規模ごとに、必要経費にできる範囲に違いを設けています。下の図は、そのうちの代表的なものを掲載しています。

必要経費等の例
事業的規模
業務的規模
固定資産等を取り壊した損失必要経費に算入でき、赤字が認められる。必要経費に算入できるが、不動産所得が0になるまでしか認められない。
固定資産が災害などにより損害を受けた必要経費に算入でき、赤字が認められる。必要経費に算入できるが、不動産所得が0になるまでしか認められない。 または雑損控除の適用を受ける。
青色専従者給与必要経費に算入できる。適用されない。
青色申告特別控除最大65万円の適用がある。最大10万円の適用がある。

まとめ

不動産所得は、その規模により必要経費の適用が異なります。賃貸などで不動産所得がある方は、ご自身の規模がどちらなのかをご確認ください。判定できない場合は、専門家へお尋ねください。

不動産所得は、取引数(仕訳の数)が少ないこと、その取引が金融機関を経由されることが多いことなどから、クラウド会計ソフトにものすごく相性が良いです。簿記に詳しくない方も、少しだけ指導を受ければ、貸借対照表及び損益計算書が簡単に作ることができます。個人の方で事業的規模であれば、65万円の青色申告特別控除を適用すること(大きな節税)も十分可能です。

【編集後記】

今年最後のブログです。「平日は毎日発信する」という目標と「誰かの役に立つ情報を提供する」という目的でやってまいりました。いつまで続くか分かりませんが、日々の張り合いのために挑戦しています。

年明けは、6日(水)から再開予定です。それでは、良いお年をお迎えください。

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