令和2年分確定申告書の「雑所得」欄に「業務」という区分ができた理由(2/2)~「帳簿書類の備付け」編~ #80

税金や会計のヒント

帳簿書類の備付けの義務

帳簿書類の備付けの義務は、所得税法第232条に定められています。この規定には、取引を帳簿に記録すること、その帳簿を保存すること、調査においてはこの帳簿が検査されることが書かれています。

ただ、この条文には、不動産所得、事業所得若しくは山林所得とされており、雑所得は含まれておりません。

しかしこれでは、自主申告における正確性や公平性が担保されません。また、昨今の副業の推奨などにより、雑所得で収益を上げる人が増えているおり、一定以上の収入(所得)がある者への帳簿書類の備付けの義務が求められてきました。

シェアリングエコノミー等の新分野の経済活動は、給与所得者が兼業又は副業としてその経済活動を行うケースも多く見られます。こうした兼業や副業を行う給与所得者は、事業所得者や不動産所得者と異なり、記帳、所得金額の計算、確定申告の経験の乏しい方が多い上、実際に兼業や副業の所得に係る確定申告の件数が増加する傾向にあります。こうした点等を踏まえ、このような納税者がより簡便に所得金額の計算を行って確定申告ができるようにするために、雑所得を生ずべき業務についても、現金主義による所得計算ができることとされました。他方、 現金主義による所得計算は現金の収受を恣意的に翌年にずらすなど所得の帰属年度を操作することにより租税回避が可能となる点を踏まえれ ば、無制限に現金主義の適用を可能とすることは適正課税の確保の観点から適当ではないことから、前々年分のその業務に係る収入金額が300万円以下である小規模な業務を行う者に限って本特例の適用ができることとされました。(財務省ホームページより)

税制改正

令和4年分の確定申告から、次のとおり雑所得の制度が改正されます。

なお、ここでの基準の数字は「収入」です。経費を引いた残りの「所得」ではありませんので、気を付けてください。

前々年分の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が300万円以下

現金主義(いわゆる小遣い帳方式)による記帳が認められます。

なお、現金主義とは、例えば売上が確定した時点(請求書の交付など)で収入に計上するのではなく、お金を受領した時点で収入に計上するという簡易な記帳方法のことです。

現金主義ではなく正規の簿記の原則による記帳でも構いません。「認められる」だけであり、現金主義でやらなくてはならないものではありません。

前々年分の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が300万円超

自己が作成した書類や受領した請求書、領収証などの「現金預金取引等関係書類」の保存が義務付けられます。

前々年分の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が1000万円超

事業所得などと同じように、確定申告書の提出の際に合わせて、収入や経費を記載した「収支内訳書」の添付が義務付けられます。

結論

従来、確定申告書の「雑所得」欄は、「公的年金等」(所得税法第35条第2項第1号)と「その他」(同2号)に分かれていました。

そして、今年申告する令和2年分の確定申告書からは、「業務」が追加されています。雑所得がある方は、お気を付けください。

雑所得がある方への令和4年分からの各種の義務を判定するのは、前々年分の令和2年分の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額です。そのため、今年の令和2年分確定申告書から、それをはっきりするため(税務署で管理するため)にこの欄ができたものです。

まとめ

雑所得の性格と令和4年分以降の義務をしっかりと認識していただき、いままでどんぶり勘定であったものを、記帳及び保存の意識を持っていただきますようお願いします。

税務調査への対処も必要です。国税庁は、令和元年6月、「シェアリングエコノミー等新分野の経済活動への的確な対応」を発表し、厳正な調査を行うと宣言しています。

なお、副業やフリーランスの方や不動産(家賃や駐車場)収入のある方には、freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトが特におススメです。上手く活用すれば、ほぼ、手入力が不要になるでしょう。

業務の内容によっては、雑所得ではなく事業所得として申告できるかもしれません。その点に関しては、税の専門家にご相談ください。

【編集後記】

1都3県に緊急事態宣言が発令されたと思っていたら、今般、福岡県も追加されてしまいました。

私は半年前から、2月8日~11日までの3泊4日で東京の中小企業大学校に経営の勉強に行くことにしていました。内容は、「配管埋設工事業」の経営改善計画を策定することです。中小企業の支援に役立つ、リアルな実践的な勉強会なので、とても楽しみにしていました。

宣言が2月7日までですが、この勉強会が開催されるのか、とても心配しています。この会は、オンライン研修では困難な内容です。

他にも、今月は長崎で、来月は福岡で、中小企業診断士としてのスキルアップのための研修受講を申し込んでおります。こちらもどうなることやら…。

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