はじめに
従来、確定申告書の「雑所得」欄は、「公的年金等」(所得税法第35条第2項第1号)と「その他」(同2号)に分かれていました。
そして、今年申告する令和2年分の確定申告書からは、「業務」が追加され、区分が3つになっています。雑所得がある方は、お気を付けください。
雑所得とは
第三十五条 雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。
所得税法は、その収入(所得)の性格を10種類に分けており、それぞれの計算方法で算出した所得を合計して1年間の所得としております。
10種類のうち雑所得を除く9種類は、「このようなもの」と所得の性格を定義しております。そして雑所得は、これらの範疇に入らない「その他の所得」とされています。
所得とは、基本的には、「収入から支出を引いたもの」です。これは、どの所得も同じです。
2 雑所得の金額は、次の各号に掲げる金額の合計額とする。
一 その年中の公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を控除した残額
二 その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額
第1号は、公的年金に関するもので、収入が決まれば機械的に所得を計算します。
第2号の計算方法を見ると、「他の所得、例えば商売している人の事業所得などとどう違うのか?」という疑問が生じます。事業所得を規定した所得税法第27条の第2項には、次のように事業所得の計算方法が規程されています。
2 事業所得の金額は、その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。
ごらんのとおり、所得税法第35条(雑所得)第2項第2号と、第27条(事業所得)第2号の文言は、ほぼ同じです。
雑所得と事業所得の大きな違い
両所得は、節税において違いがあります。その中で特に大きなモノが、青色申告と損益通算です。
青色申告
事業所得は青色申告ができます。
第百四十三条 不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行なう居住者は、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、確定申告書及び当該申告書に係る修正申告書を青色の申告書により提出することができる。
この条文に雑所得は出てきません。したがいまして、雑所得は青色申告ができません。その結果、専従者給与を支払う、青色申告特別控除を適用する、損失(赤字)を翌年に繰り越すなどの青色申告の特典(減税)を受けることができません。
損益通算
損益通算とは、ある所得が赤字になった場合、同じ年に、他の黒字の所得からその赤字分を引いて減税することです。「損」と「益」を「通」して「算」出することで、その年の黒字を減らすことができます。
第六十九条 総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、政令で定める順序により、これを他の各種所得の金額から控除する。
赤字を他の所得と通算できるのは、10種類の所得のうち、不動産所得、事業所得、山林所得及び譲渡所得の4つだけです。頭文字を取って、「不・事・山・譲」→「ふ・じ・さん・じょう」→「富士山上」と私たちは言っております。試験勉強のための語呂合わせですけど。
ここにも、雑所得は入っておりません。つまり、雑所得は、どんなに赤字でも他の所得から引けないのです。
ちなみに、これらができないようにされているのは、雑所得の赤字の繰越や通算を認めると、恣意的に(極端に言えばどれだけでも)税金を減らすることが可能となるためです。
雑所得と事業所得の境界線
結論から言えば、境界線ははっきりしておりませんので、どうしてもグレーな部分が存在します。
前述のとおり、税において有利(節税)なのは、事業所得です。そのため、納税者や税理士は、ある所得を雑所得ではなく事業所得だと主張する場合があります。そして、税務当局と対決した結果、数多くの裁判例が生まれました。
実務としては、法律の文言を読み込み、裁判例と照らし合わせながら、どちらの所得になるのかを判断しておりました。
(明日のブログへ続く。)
【編集後記】
私は、Googleのローカルガイドをやっています(どなたでもやれます。)。いろいろなクチコミを投稿することでレベルが上がるのが楽しく、マメにやっています。昔からロールプレイングゲームが好きだったことも影響しているのかもしれません。
気に入ったお店(小規模事業者)を応援することに喜びを感じています。今朝も、Googleから評価の依頼が。せっせとお勤めしておりますが、報酬はございません。
コメント