申告相談
若いころ、申告の相談にお見えになられた納税者の方から、「税金が〇倍になった!」「還付金が〇分の1になった!」などとご不満を言われたことがあります。
でも、所得税の計算の仕組みをご存じの専門家だったら、「そういうこともあるだろうね。」とおっしゃることでしょう。
所得税の計算の仕組み
[出典:財務省ホームページ]
これは、サラリーマンを例に所得税の計算の仕組みを説明した図です。
税金は、給与収入に直接課税されるものではありません。まず、一番左の年間の収入から、サラリーマンの必要経費と言われる「給与所得控除」(計算方式は法律で定められています。)を引きます。
引いた残りから次に、社会保険料控除、生命保険料控除、扶養控除などの「所得控除」(人それぞれの金額)を引きます。その残ったものに、「税率」を掛けて納める税金を算出します。
また、税金の計算においても、「超過累進税率」という(私は、初めてこの言葉を聞いたときに全く理解ができませんでした。)少しややこしい計算方式で算出します。
更に、算出した税額から、「税額控除」という形のもので税額を減らして、確定申告で納める税金が決まります。
相談者の例
これらの相談者の方の職業も数字もまったく覚えていませんが、おそらく次のようなものだったでしょう。なお、現在の最低税率は5%ですが、当時は10%でした。
去年
事業収入10,000,000円 -事業経費8,160,000円 - 所得控除1,839,000円 = 課税される金額 1,000円×税率10%=所得税額100円
今年(収入のみが1%増加と仮定)
事業収入10,100,000円 -事業経費8,160,000円 - 所得控除1,839,000円 = 課税される金額 101,0000円×税率10%=所得税額10,100円
収入は1%(100,000円)しか増えていないのに、所得税は去年100円が今年は101倍の10,100円になっています。
所得税が収入に課税される仕組みであれば、収入の増減率と税金の増減率は同じになるかもしれませんが、実際は、3段階で課税される金額が減少するために、必ずしも単純に収入に比例するものではないから起こる事象です。
まとめ
先日も、「数年前から還付金額が半分になった」とおっしゃる方がいらっしゃいました。
前述の所得控除も毎年金額が変わることが多いです(それほど大きくなくても)。ご自身は同じような生活をしていても、納める(還付される)税額は、ある程度の幅で変動いたします。
そして、その増減の倍率は、税金が少ない方ほど大きくなります。
【編集後記】
納税者の方は、結果(税額)に対する不満を、計算した者にぶつけられる人もいらっしゃいます。「あなた、間違っていないの?」という気持ちかもしれません。これは、税金が算出される仕組みが分からないままに結果(税額)だけが、いきなり目の前に出てくるからでしょう。
したがって、その不満(モヤモヤ感)を解消するには、ご自身で勉強して自分で申告書を作れるようにならないと、ずっと解消できないままです。(もともと日本の所得税は、自分で税金を計算しなければならない制度となっています。)
今は、国税庁ホームページでの確定申告書等作成コーナーという便利なツールが無料で使えます。そして、多くの納税者の方が自身で税額を計算し、申告されています。
ここで必要な数字を入力していくことで、税金が計算される仕組みが理解できますので、不満も少しは解消されるのではないのかなと考えています。
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