会計の専門家である税理士が戸惑う クラウド会計ソフトfreeeの設計思想④「決済・未決済」 #232

税金や会計のヒント

債権債務

債権債務に関する簿記での代表的な勘定科目は、売掛金・未収金、買掛金・未払金でしょうか。

「簿記の知識がない方でも使える」ことを標榜しているfreeeでは、(取引を登録する際に)このような勘定科目は普段は使いません。(以下、freeeヘルプセンターに記されている部分を青字で引用します。)

取引の登録で、勘定科目「売掛金・未収入金・未収収益」、「買掛金、未払金、未払費用」という入力は通常行いません。freeeの取引データには、「決済済み」と「未決済」の2種類のステータスがあります。
対価の支払い・回収が完了している場合に「決済済み」、そうでない場合に「未決済」を選択します。

逆の視点から見れば、簿記試験にも日常の経理でも、「決済」や「未決済」という言葉は、通常使いません。

簿記で凝り固まっている私は、仕訳の都度、脳内で変換しないと付いていけません…。私がfreee専門の税理士でしたらいつかは慣れるのでしょうけど、マネーフォワード(こちらは簿記で仕訳)も併用していますので、なかなか慣れません。

仕訳

とは言え、帳簿や決算書は簿記で作らないとステークホルダーの皆さんが困ります。そこで、freeeでは、複式簿記とは違う方法で取引を登録しているももの、裏ではソフトが自動的に、複式簿記を行っています。

例えば、freeeを使って「売上」を「未決済」で登録すれば、裏で「売掛金/売上高」という仕訳を、「消耗品費」を「未決済」で登録すれば、裏で「消耗品費/未払金」という仕訳をしています。

「仕訳レビュー」をオンにしておけば、仕訳を見ながら入力することも可能です。

「取引の一覧」と「仕訳帳」

freeeでは、債権債務の管理もソフトの中で行います。

例えば、「取引の一覧」という取引の記録の中で7月31日にA社の売掛金を計上した場合、その取引の入金が8月31日であれば、入金の「決済」は7月31日の欄に登録されます。この入金は、債権発生に紐づけられたことにより、8月31日には出てきません。

freeeにも「仕訳帳」があり、仕訳としては8月31日に登録されます。しかし、freeeで普段よく目にする「取引の一覧」(最初、「仕訳帳」との違いが分かりませんでした。)では登録したはずの日にそれが無いので、戸惑うかもしれません。

まとめ

前述のとおり、簿記で仕訳をしようと考えるとfreeeは、とても使いにくいと思われることでしょう。設計思想が違いますので、(簿記が得意な方は特に)割り切ってから使い始められることをおススメいたします。

【編集後記】

私は、税理士と中小企業診断士のダブルライセンスで活動しています。

今般、中小企業診断士協会南部会会員に対し「中小企業診断士向け インボイス制度の概要及び実務」を、九州北部税理士会八女支部会員に対し「インボイス対応に使える補助金セミナー」を行うことになりました。

楽しみです!

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