私の娘はおめでたい 税法における年齢の判定 #108

税金や会計のヒント

1月1日

12月31日夜、産気付いた女房が分娩室でがんばっている中、私は、待合室のテレビで「ゆく年くる年」を観ていました。鳴り出した除夜の鐘が聞きながら新しい年になった直後(0時2分)、分娩室からは赤ん坊の元気な泣き声が聞こえてきました。

母子ともに無事だったことに対し、お医者さんにお礼を言いましたところ、お医者さんの口からは、意外な言葉が発せられました。

「(出産日を前年の)12月31日にしておきましょうか?」

扶養控除の判定

所得税法の所得控除には、人的控除と呼ばれるものがあります。障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除です。

このような控除は、通常、12月31日(死亡の場合は死亡のとき)の現況で判断いたします。

また、所得税法上での扶養親族とは、第84条及び85条において、次のように定められています。

  • 納税者の親族(配偶者を除く)
  • その年の12月31日において納税者と生計を一にする者
  • その者の合計所得金額が48万円以下の人

そして、扶養控除には、いくつかの区分があります。16歳以上(所得控除額38万円)、19歳~22歳(同63万円)、70歳以上(同48万円又は58万円)などです。なお、16歳未満の場合には、扶養控除はありません。娘が生まれた当時は、16歳以下という区分がありませんでしたので、その年に扶養控除に入れることができました。

その判定は、12月31日です。そのため、子どもがその日に生まれた場合、たった1日しか扶養していませんが、日割り計算することなく1年分の扶養控除を受けることができます。税率が10%の方なら、所得税と法人税で76,000円の減税です。そのため、当時、大みそかに生まれた子供を「親孝行」などと言っておりました。

しかし、1月1日に生まれた娘は、前年の扶養控除を受けることができません。お医者さんはこのことをご存じだったのでしょう(過去に、どこかの親からそうしてくれと求められたのかもしれません。)。そこで、このようなサービス(?)を提案されたのでしょう。

私は、「(1月1日生まれなんておめでたいことだし、本人の人生にとってもそちらの方が良いだろう。)」と考え、せっかくのお申し出ですがお断りいたしました。

年齢の数え方

前述のとおり、扶養控除は、年齢によって適用されるかどうか、また、控除額がいくらになるかが変わります。

「所得税の確定申告書の手引」(清文社)の扶養控除の意義には、一般の控除対象扶養親族を次のとおり記されています。

扶養親族のうち、令和2年12月31日現在において年齢16歳以上の人(平成17年1月1日以前生まれの人)

ここで、「あれ?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。「平成17年1月1日以前生まれじゃなく、平成16年12月31日以前生まれじゃないの?」と。

これには、理由があります。

年齢計算ニ関スル法律

年齢を数えるための法律です。明治35年制定の法律で、3条しかありません。

  1. 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
  2. 民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス
  3. 明治六年第三十六号布告ハ之ヲ廃止ス

民法第143条第2項

「年齢計算ニ関スル法律」第2条に出てくる「民法」第143条は、次のとおりです。

  1. 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
  2. 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

結論

年齢を数える場合は、生まれた日の前日に満了したものとしてカウントします。そのため、条件が年齢となっているものについては、生まれた日に年齢が増えるのではなく、その前日に年齢が増えます。

小学校入学において、4月1日生まれの子が前の学年に入る(ように感じる)のはそのためです。

今はコンピュータに生年月日を入力すればソフトが自動的に判定してくれますが、手で計算していた時代には、ときどき間違った申告が散見されていました。

【編集後記】

私の亡き父は、4月1日生まれでした。以前聞いた話では、本当は4月2日に生まれたけど、親は4月1日として届け出たそうです。そうすれば、1年早く社会に出ることができ、1年分の生活費が浮くということです。昔はそういった例があったそうです。

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