総務省接待報道から思い出したこと #109

その他

はじめに

NHKのサイトから、「首相長男らと会食 職員11人 倫理規程違反の接待と発表 総務省」2021年2月22日 19時27分を読んで、私が以前所属していた国税という職場の環境と雰囲気を思い出しました。

(注)ここでの内容は、国税当局及び国税職員とはまったく関係なく、私の勝手な思い込みですので、申し添えます。

昔話

職場に入った40年以上前、最初に赴任した税務署で、私は予防講話を受けました。「予防」とは「非行の予防」のことです。税務署は、昔から、非行の防止にもの凄くエネルギーを注いでいる職場です。(それでも、不祥事は「ゼロ」にはなりませんが…。)

講話では、「納税者宅に調査や徴収で訪れた際に湯茶が出された場合、お茶(緑茶)は飲んでも良いが、コーヒーはダメだ。」という指導を受けました。当時、コーヒーというものは一般家庭では飲むことはできず、喫茶店でしか飲めない代物でした。そのため、「納税者からコーヒーの供応を受けた。」とされるという話です。確か当時、喫茶店では1杯250円くらいしたと思います。

「なぜ、お茶は問題ないのですか?」との質問に対し講師は、「日本の文化として、お茶の接待は許される。」との回答でした。さらに、「出されたケーキは食べてはならない。」など、事細かに指導されていました。最後は、世間の常識と自分の良心に従って行動することを厳しく躾られました。

20歳代後半、ある農家に税務調査に行った際、お茶請けに漬物が出てきました。自家製のご自慢の漬物のようでした。私は、「(頂いてよいものか?)」と躊躇したことを覚えています。「(農村ではこれも文化だろう。)」と判断し、その自家製漬物をいただきました。

国税職員というのは、このくらい神経質に考える種族です。だからこそ、今回のタダでの飲み食いが、私には感覚として理解できないのです。

今回の接待での二つの疑問

「利害関係者にあたると思わなかった」という言い訳

「思った」と言ったら故意として処分が重くなるので、思っていたとしても、こう言わざるを得ないのでしょう。

でも、本当にそう思わなかったのであれば…。

総務省は、その程度の方がトップにいらっしゃる組織ということになります。

私には、「この程度の方々の部下」が気の毒で仕方ありません。これくらいも分からないレベルの方ということは、仕事のレベルも知れます。部下の方々は、今までご苦労なさったことと推察いたします。

また、このレベルの官職の方々なら、秘書若しくは秘書に相当する担当者が必ず付いているはずです。完全にプライベートでない限り、彼らを通さずに会食することなどあり得ません。その秘書も利害関係者と思わなかったのか、思っても言えなかったのか、言ったけど聞いてくれなかったのか。それは、分かりません。

さて、国税では、国家公務員倫理法の他に、国税庁内の通達で、より広く民間の方々との付き合いを制限しています。倫理法では利害関係者に該当しない相手であっても、「国民から疑念が生じた」場合処分の対象とされてしまいます。そのため、私たちは、国税以外の方々とのお付き合いには、とても慎重にならざるを得ませんでした。利害関係者ではなくても、「もしかしたら?」と思ったら、君子危うきに近寄らないか、事前に担当部署に確認してから行動する癖が付いておりました。私も部下には、「自分の身は自分で守りなさい。」と指導しておりました。

現在私は、自由の身です。誰にも憚ることなく行動できます。知り合いから儀礼の品(中元、歳暮など)を頂くことには、まだ少し抵抗がありますが、徐々に世間に慣れようとしているところです。退職した今、税務の職場にいた当時がいかに縛られていたのか、実感しているところです。

そのような私ですから、公務員が人からタクシー券や高級食パンを貰うなど、信じられません。

公務員が人のお金で飲み食いをするという感覚

「首相(官房長官)に忖度したので断れなかったのではないか。」という報道もありました。

仮にそうだとしましょう。

しかし、そうであったとしても、なぜ自分の分の飲食代を支払わなかったのでしょうか。タダ酒を飲む感覚が私には分かりません(多くの国税職員も同様だと思います)。割り勘でしたら、少なくとも「お付き合い」という言い訳は可能でした。

営利企業があなたにタダで酒を飲ませ、タダで食事を提供することに疑問は生じなかったのでしょうか。裏もなく完全に好意だと思われたのでしょうか。そうであれば、人が良すぎます。一般的には、営利企業側としては、そこに何らかの目的があるのは当然です。懇親会の席上で許認可の話が出なかったとしても、企業は将来のために投資しているだけです。タダ酒飲まされたら、弱みを握られたのと同様です。

企業側の経費性

接待側である東北新社には、(何年後かは分かりませんが)いつかは税務調査が入ることがあるでしょう。

そのとき、企業側は、このような支出(飲食費、お土産代、タクシー代)を調査担当者に何と説明するのでしょうか。

「下心は一切ありません。許認可とも関係がありません。」と主張した場合、「企業に利益をもたらさない費用」になり、経費性はあるのかという疑念が生じます。役員が勝手に使ったなら、私的な費用として役員賞与に認定されることでしょう。さらに、その場合、給与として課税される上、法人として経費に算入できません(俗に「往復ビンタ」と呼ばれます。)。

逆に、「利益をもたらすための費用」だと主張するならば、賄賂の可能性が出てきます。

【編集後記】

「キャリア官僚の不祥事により、ルールが厳しくなる。」パターンは、過去から繰り返されてきました。今回も、総務省には、新たなルールができたようです。真面目に努めている他の公務員の皆さんが気の毒でなりません。

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