クラウド会計ソフト「freee」を使うクライアント(個人事業主)に 予定どおり1年で卒業していただきました #220

税金や会計のヒント

「はじめてでもカンタン」(by freee)

freeeのホームページで確定申告ソフト(個人向け)を見ると、「はじめてでもカンタン 」と大きく表示されています。

本当に「はじめてでもカンタン」なのでしょうか?

私は、クラウド会計ソフトであるこのfreeeやマネーフォワードを人に強く勧めていますが、それは「カンタン」だからではありません。私が人に勧める大きな理由は、①データ連携するだけで入力作業が大幅に短縮される、②機能を使いこなせばさらに記帳が効率化できる、からです。

ある辞書によると、『簡単』とは、「取り扱いがたやすく、手数がかからないこと。」と記されています。freeeは、後者の「手数がかからない」ことには賛同しますが、「はじめてでも取り扱いがたやすい」とは思いません。

freeeが言う「はじめて」は何を指しているのか。「記帳がはじめて」なのか「(他の会計ソフトの経験はあるが)freeeという会計ソフトを使うのがはじめてなのか」。パッと見は、前者を想像させるキャッチコピーです。そうであれば、使い続けてきた私からすれば、「はじめてでもカンタン」とは、言えません。恥ずかしながら、私自身が最初から「カンタン」には使いこなせませんでしたから。また、「はじめて」が後者を指す場合であっても、最初は面食らうでしょうから「カンタン」にはいきません。

「簿記を知らなくてもカンタンに入力できる!」(by freee)

「簿記を知らなくてもカンタンに入力できる!」とは、少し盛り過ぎだと思います。ここでも、「簡単」ではなく「カンタン」と言っていますが、カタカナにした方が、さらに「カンタン」に感じるからでしょうか。

freeeでは、普段の記帳において「売掛金」や「買掛金」など、簿記の経験が無い方にとっては難解な勘定科目を(直接は)使いません。これらの勘定科目を使わなくても経理ができるというのがfreeeの強みです。

しかし、事業や経理というのはそんなに単純ではありません。現実には、簿記の知識が無いと、「この場合、どう入力するの?」、「なぜ、ここにこの数字が?」などの場面ががたくさん出てきます。

また、日々の記帳によって作られた試算表や決算書は、経営に役立てなければなりません。その場合も、ある程度簿記の知識は必要です。

「複式簿記は人類最大の発明」とも言われることがあります。世界中で使われているこの複式簿記を知らなくて本当に経理ができる(入力が完了)なら、ノーベル経済学賞が取れることでしょう!

それでもfreeeを勧める理由

クラウド会計ソフトのメリットやデメリットは、過去の記事をお読みください。

使って(使いこなして)みるとクラウド会計ソフトは、ものすごく経理が楽になります。

経理はとても重要な作業です。確定申告はもちろん、経理を行うことによって生成されるデータは、経営に大いに役立ちます。また、融資においても重要なものです。このように、経理はお金を生むとも言えますが、経理のうち入力作業の部分はお金を生みません。生むのは入力後のデータです。「お金を生まない入力作業は可能な限り効率化し、お金を生む活動にエネルギーを注ぐべき。」というのが私の持論です。

クラウド会計ソフトに興味をお持ちの方は、たくさんいらっしゃいます。私は、毎週月曜日、よろず支援拠点福岡で個別相談を行っていますが、1日の相談5件のうち2件はクラウド会計ソフトに関すること(ソフトの選び方、使い方など)です。

私が勧めるのはfreeeかマネードワードです。いつも「私はどちらを選んだ方が良いですか?」と聞かれますが、私はまず「簿記の知識(経験)はありますか?」と逆質問をし、(他の要因も考慮しますが)基本的には、有るならマネーフォワード、無いならfreeeを勧めています。

マネーフォワードは、他のインストール型と同様、複式簿記のスタイルで経理をするソフトですので、簿記をご存じの方はこちらがとっつきやすいでしょう。また、他の会計ソフトを使ったことがある方も、こちらの方がスムーズに使いこなせると思います。

freeeはクセがあって(簿記を知る者にとっては)とっつきにくいソフトですが、簿記をご存じない方はそのような壁がないでしょうから気にならないでしょう。そして、使いこなせるようになったときのfreeeは効率度合は、マネーフォワード以上と考えています(今後マネーフォワードの機能がfreeeに近づくことをとても期待しています。)。スマホでも9割方、入力が完了するのも魅力です。

世の中で簿記の知識が一定以上ある方と無い方では、無い方が多いでしょうから、結果的に、freeeとマネーフォワードの紹介割合が2対1くらいになっている感覚があります。

卒業していただいた個人事業主

freeeでもマネーフォワードでも、私が一定の期間アドバイスを続ければ、個人事業主の方はご自分で入力し、決算・確定申告まで完結できると考えています。そのため、私と個人事業主との顧問契約は、「翌確定申告までとし自動継続しない」契約としています。

そして今年の3月をもって、数名の方(全員freee)が晴れて卒業(自立)されました。

ソフトの機能は、すべてを知る必要もなく、個人ごとに、使う機能は限定されていきます。簿記の知識が無い方が悩まれる開始残高(開業時の貸借対照表)や固定資産台帳を時間をかけて登録すれば、後は普段の入力(登録)だけです。個人の決算期である12月末の処理も、一度伝えれば、後は基本的に毎年同じようなことをすれば良いだけです。

決算が終われば確定申告ですが、これもさほど難しくはありません。ソフトが求めるものを選んだり入力したりするだけで確定申告書が作成され、最後はスマホでe-Tax(電子申告)。

皆さん、これらを一通り理解されました。私は、個人事業であれば、1年での卒業は、多くの方が可能だと信じています。

アフターケア

卒業されたとはいえ、完璧に経理を理解されたとは思っていません。また、契約終了後、過去にない取引も新規に発生しているかもしれません。

そのため、6月と年明けにアフターケアを予定しています。一度顧問契約を結んだ縁です。そこまで対応したいと思います。

【編集後記】

普通高校を卒業し税務大学校に4月に入校して、初めて簿記を勉強したときは、まったく理解ができませんでした。それでも、強要された6月の簿記3級試験に向けて、「理屈より形」「頭でなく手で覚えよ」という詰込み教育により膨大な問題量をこなすことでやっとのこと合格できました。そして、税務大学校を卒業してから3年後、改めて簿記の勉強をし直して2級を取得しました。

その知識は、中小企業診断士試験(1次試験の「財務・会計」、2次試験の「事例Ⅳ」)でも活かされ、そして今は税理士として日々利用しています。私にとっては、簿記は恩人です。

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