扶養控除の適用がないのに16歳未満の扶養親族を確定申告書に記載する理由 #180

税金や会計のヒント

はじめに

ある日、知り合いの女性から、質問を受けました。

「それ程多くないがパート収入がある。市役所に申告の相談にいったら、担当の方から『16歳未満の扶養親族をあなたの扶養にすれば住民税がかからなくなる。』と聞いたが本当か。」という質問です。

収入が多いご主人がいらっしゃるその家庭では、通常、扶養控除は所得が多い方に適用した方が有利であり、かつ、収入を考えれば常識的には、経済的に扶養していると言えるのは夫の方だと思います。

なぜ、そのようはことを市役所の方が指導されたのだろうかという疑問が湧き、調べてみました。

廃止された扶養控除

平成23年分所得税から、16歳未満の扶養親族に対する扶養控除が廃止されました。これは、子ども手当が充実したためです。手当に税金を使う以上、重ねて減税するのはおかしいという議論からそうなったものです。国税庁作成の確定申告の手引きにも、「16歳未満の扶養親族については、扶養控除の適用はありません。」とはっきり記載されています。

また、住民税の扶養控除においても、同様に16歳未満については廃止されています。つまり、市役所の指導は、扶養控除に関することではないということになります。

所得税の確定申告書

ところで、所得税の確定申告書には、第二表の「配偶者や親族に関する事項」の「住民税」欄に、16歳未満の扶養親族がいれば印字されている「16」という数字に丸を囲む必要があります。

ついでに言えば、給与所得者が勤務先に提出する扶養控除等申告書にも「住民税に関する事項」として16歳未満の扶養親族を記載する欄があります。さらに言えば、給与所得の源泉徴収票にもその欄があります。

これらのことから、この欄は、住民税の計算に必要があることが推測されます。

住民税が課税されない人

調べてみると、一定の所得以下の方は住民税が課税されないとされている条文が地方税法にありました。

今回の例では、16歳未満の扶養親族を妻に入れることで、住民税の均等割と所得割等が課税されないことが可能となります。

一定の所得とは、均等割の場合は、「本人の同一生計配偶者及び扶養親族の数に1を加えた数に生活保護基準の級別区分の別に一定額(1級地:35万円、2級地:31.5万円、3級地:28万円)を乗じた金額(同一生計配偶者又は扶養親族を有する場合には、その金額に生活保護基準の級地区分の別に21万円、18.9万円、16.8万円を加えた金額)に10万円を加算した金額」です。[出典:所得税の確定申告の手引(清文社)]

所得割等の場合は、「前年中の総所得金額等が、35万円に本人の同一生計配偶者及び扶養親族の数に1を加えた数を乗じた金額に10万円を加算した金額(同一生計配偶者又は扶養親族を有する場合には、その金額に32万円を加えた金額)以下の人」です。[出典:所得税の確定申告の手引(清文社)]

市役所の担当者は、このことを言われていたようです。

さいごに

この家族の場合、外形的には、夫が扶養していると見るのが常識的と思います。

また、ご主人は名のある会社にお勤めの方です。もしかしたら、職場には扶養手当の制度があるかもしれません。職場には「夫が扶養している」と申告してそれを隠し、市役所には「妻が扶養している」と申告したことがもしも職場にバレたら、職場での信用を失うおそれがあります。

たしかに「節税」なのかもしれませんが、行政が積極的に指導することではないような気がして、モヤモヤします。

【編集後記】

2か月前、私より先に退職された方(65歳)が、肺がんでお亡くなりになりました。

ご本人は非喫煙者であったことから、ある先輩が、「タバコを吸わなくても肺がんになるんだね。」とおっしゃいました。その先輩には何も言いませんでしたが、私は心の中で「(長年、副流煙を吸ってきたからではないのか?)」と考えました。

今はどこの職場でも禁煙が徹底されているとは思いますが、少し前までは、周りは喫煙者だらけで職場や宴席ではタバコの煙が充満していました。したがってその方も、長く他人のタバコの煙を吸ってこられたことでしょう。そう考えると、これからの人生なのに気の毒だなぁと思います。

私はタバコは吸わないし、ジョギングで心肺機能は鍛えているつもりです。そのため、肺の検査にはあまり興味を持っておりませんでした(数値は正常ですし)。でも、私自身もずっと副流煙を吸ってきたことでもありますし、今後は、肺についてももっと慎重に考えていきたいと思いました。

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