法人成りのメリットとデメリット #88

税金や会計のヒント

ネットの情報

昨日、知り合いの紹介で、法人成りの相談にお見えになられた方に、メリットとデメリットを説明いたしました。事業を続ける上で、法人に成った方がよいのか、個人のままが良いのかは、多くの方がご検討されることでしょう。

ネットで検索すると、税理士によっては、「個人事業の所得が〇〇万円を超えたら法人が有利」として、法人成りを勧めているところがいくつもありました。中には、「収入が1,000万円、所得が400万円を超えたら法人が有利」とされているところもありました。

私はそうは思いません。単純に「所得税と法人税」を比較しただけならそうなる場合もあるかもしれませんが、お金の話をするなら、健康保険料、年金保険料、住民税なども検討材料に入れなくてはなりません。

また、「所得が400万円の場合、個人の税率が20%で法人の税率が15%だから」という根拠から言われているのかもしれません。しかし、個人の場合は、所得から差し引かれる所得控除というものがありますので、所得が400万円だったら、通常は税率10%のところに落ち着くことが多いです。

さらに、税理士報酬も検討しなければなりません。普段の記帳は個人事業主も法人もそれほど大きく変わるものではありませんが、決算や節税は別です。それ相当の知識をお持ちの方が社内にいない限り、税理士を顧問に迎え入れないと大変でしょう。そのため税理士への支出が増えます。

前述の税理士は、自分の顧問先を増やすためにそのような数字を出しているのではないかと疑ってしまいます。

法人成りのメリット

以下は、個人事業主でもできることもありますが、法人が有利な部分があるものを列挙しています(デメリットも同様)。

  1. 所得税を節約できる
  2. 家族へ給与を支払うことができる
  3. 配偶者控除・扶養控除を受けられる
  4. 退職金を支給することができる
  5. 出張手当を経費にできる
  6. 生命保険を活用して節税できる
  7. 社員住宅で節税できる
  8. 慰安旅行を経費にできる
  9. 赤字を9年繰越できる
  10. 消費税の2年の免税期間を活用できる
  11. 社会的な信頼を得られる
  12. 賠償の範囲が限定できる
  13. 決算期の変更による所得の分散が可能である
  14. 補助金・助成金の申請が有利になる
  15. 事業継続がしやすい
  16. 保証人を頼まなくても良い
  17. 有限責任で済む
  18. 事業売却が容易である
  19. 社会保険が充実する

法人成りのデメリット

  1. 設立費用がかかる
  2. 株主総会・取締役会など運営に手間がかかる
  3. 住民税の「均等割」がある
  4. 社会保険の加入義務がある
  5. 税理士費用がかかる
  6. 各種契約料金が高くなる
  7. 税務調査を受けやすい
  8. 交際費に制限がある

まとめ

法人成りを検討される場合、税理士、社会保険労務士、中小企業診断士、司法書士などを活用して金銭的損得のシミュレーションするとともに、その他のメリット(信用など)と比較した上で法人に成るかどうかを検討されていください。

相談は、専門家の中では、税理士が最適でしょう。ただし、一般的に、同じ事業規模でも法人の方が税理士報酬が高めに設定されています(税理士側も作業量や経費が増えるため。)。

むやみやたらに法人成りを勧める税理士は避けた方が良いかもしれません。

【編集後記】

現在、自分の合同会社設立の準備をしています。定款は作りました。

いろいろな角度から検討して、私の場合は、法人(合同会社)を設立した方が今後の事業のために有利と判断いたしました。

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