「冒険家は冒険をしない」 事業計画書を作成しよう #87

経営のヒント

冒険とは

私の国語辞典(旺文社)には、「冒険」とは、「危険をおそれず行うこと。また、成功の見込みのないことをあえてすること。」と記してあります。

では、冒険家と呼ばれる(名乗っている)方々は、「冒険」をするのでしょうか。私はしないと考えています。だって、辞典に書かれているような行動をしたら命がいくつあっても足りませんし、スポンサーも付いてくれません。冒険家と呼ばれる前に命を落とすか、早々に資金がショートすることでしょう。

一般の方々からは、その達成した実績が「冒険(危険をおそれず行うこと。また、成功の見込みのないことをあえてすること。)」をしたように見えるだけです。

冒険家は

想像するに冒険家は、綿密な計画を立てて行動に移します。時間、予算、体力、勉強、仲間…etc.、準備しなくてはいけないものが膨大にあります。

また、リスクを最大限検討します。成功のためにはどのようなリスクがあるのか、そのリスクを回避するにはどうすれば良いのか、撤退の条件は何か、失敗した場合の対応などです。どこまで準備したとしてもリスクはゼロにはなりませんが、事前の準備と行動後の判断により、最小限にすることは可能です。

事業計画

創業する際、新しい業態に転換する際、事業を拡大する際など、事業計画を立てることと思います。

この計画を立てずに事業を始めたり拡張したりすることは、「冒険」です。上手くいくことが無いとは言いませんが、確率的には極めて低いことでしょう。羅針盤(事業計画書)を持たずに船出(創業)する船員(事業者)はいないと思います。

財務的な計算もされるでしょう。収入や経費の見積り、そしてその数字の根拠は何でしょうか。

補助金や融資を申請する場合、必ず事業計画書を提出します。根拠がある計画を策定していない人に、お金を出したり貸したりする人はいません。

なお、事業計画書を策定するメリットとして、①事業を客観的に見つめることができる、②リスクを軽減できる、③資金調達に有利、④事業を検証できる、なども考えられます。

私にとって事業計画書は、ブレない姿勢を作るという理由もありました。

運頼み

事業計画を策定せずに事業を行う方の心理は、私には分かりません。よほど自信があるのでしょうけど、私から見たら「運頼みの冒険」に見えてしまいます。私は臆病者ですので、リスクとリターンをある程度比較衡量します。

多くの成功者が、「運が良かった」「運に助けられた」と発言されます。これは、十分な準備(事業計画)があったからこそ、「運」と呼ばれるものがその方に寄ってきただけです。『風が吹けば(事業計画を立てれば)桶屋が儲かる(運が寄ってくる)』だけのことです。更に言えば、己の能力で築いたものである自身の成功を謙遜されているような方だからこそ、成功者と呼ばれているだけのことです。万が一にも、「運頼みの」若しくは「運に強く左右される」事業を始めてはいけません。事業の成功は、必然であるべきです。

ゴルフに例えると

話は横道にそれますが、私はゴルフで安全策を選択することから、「年寄り」と呼ばれてきました。しかし、アマチュアである私にとっては、難しいショットに挑戦することは、「冒険」です。ゴルフは、1打(一発)の成功を競うのではなく、18ホール終わった時点でいかに少ない打数で上がるかを競うスポーツです。ゴルフをやる方はお分かりだと思いますが、ミスがミスを呼び泥沼に落ちていくことがあります。ゴルフは、やり(打ち)直しはききませんので、最終結果は惨憺たるものになってしまいます。

事業も同様だと考えています。事業活動というものは、将来にわたって「継続」していくものです。そして、人生も似たようなものです。自分が進む先にはどのようなリスクがあるのか、そしてそのリスクを最小限にする方法は何があるのか、セーフティネットはあるのか…etc.

私の計画

私は、創業に当たり24ページの事業計画書と5年分の資金繰り表を作成しました。そして、事業計画書は、次の9項目に分かれています。

  1. 代表者略歴
  2. 事業の内容
  3. サービス内容
  4. 事業を取り巻く環境
  5. プロモーション
  6. 創業時の経営課題
  7. 利益予測
  8. 資金繰り表についての説明
  9. 資金計画

資金繰り表は、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローを5年分作成しました。

これらのおかげで創業時の補助金(返還不要)と日本政策金融公庫による融資(要返済)を、滞りなく受けることができました。

私の実績

創業して5か月経ちました。偉そうなことを言っている私の実績は、計画どおりに進んでいるのでしょうか。

まず、投資活動によるキャッシュフローと財務活動によるキャッシュフローですが、創業して半年程度で計画が大幅に崩れることは通常考えにくく、私の場合も計画どおりに進んでいます。

問題は、営業活動によるキャッシュフローです。

支出は、勘定科目ごとに増減したものはあるものの、合計レベルではほぼ計画どおりです。

そして収入ですが、これは大幅に違いました。

実は、資金繰り表では、2020年9月から2021年1月までの5か月の収入は「0円」として計画しており、確定申告が始まる2月以降に徐々に増える計画でした。

これは、税理士や中小企業診断士という仕事は、看板を上げたらすぐに仕事が舞い込むような業種ではないからです。多くの先輩方からは、「軌道に乗るまでには最低3年かかる。」と聞かされていましたことも、そう計画した理由の一つです。

ところが、予想が良い方に外れて、ある程度の収入を得ることができたのです。令和2年分の決算書は作り終えましたが、単年度黒字となりました(任意償却である開業費を除く。)。

その要因は、第1には運が良かったこと、第2には事業計画において策定していたプロモーション(種蒔き)を愚直に行ったことだと考えています。

事業計画書を練って良かったと、心から思っています。

まとめ

  • 冒険家は冒険をしない。
  • 事業には事業計画書が必須である。
  • 事業の成功は必然である。

【編集後記】

表題の「冒険家は冒険をしない」という言葉は、好きな格言です。だって、自分で考えた言葉ですから(笑)。

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