「事業再構築補助金の概要」(令和3年2月15日)の概要 #104

経営のヒント

概要公開

今週月曜、中小企業庁から、「事業内容が変更される場合がある」との条件付きで、事業再構築補助金の概要(サマリー)が公開されました。ただ、それほど大きく内容が変わることはないでしょうから、現在、これで頭作りをしております。

サマリーは、以下の11項目に分かれています。申請をお考えの方は、ご自身で一読されておかれることをお勧めします。

なお、内容で気付いた点について、補助金初心者の方のために、概要の概要を記載します。サマリーを一読された後にお読みいただくと、より分かり易いでしょう。

①事業目的、申請要件

条件は緩やかです。「直近の6か月のうちの3か月の合計売上高」は、連続する必要はなく任意の3か月を選択します。そのため、多くの事業者が条件(10%以上売上減少)に合致することが予想されます。

計画を認定支援機関と共に策定しなければなりませんが、これは、多くの税理士・中小企業診断士や商工会議所・商工会が認定されていますので、「ここを探すのが大変」ということはありません。

事業計画の策定については、一定の知識と経験が必要です。また、「付加価値の増加」については、しっかりとした根拠が必要になります。これらについては、審査において点数が付けられますので、具体性や実現可能性が問われるところです。

なお、「事業計画を認定支援機関が作ってくれる」と思われないようにしてください。事業計画を一から作ってもらうなら、最低でも30万円以上は必要ではないでしょうか。アドバイスをもらう程度なら数万円で済むかもしれません。先方とよく話し合ってください。

②予算額、補助額、補助率

「1兆1,485億円の予算」、「複数回に分けて公募を実施」とありますので、慌てる必要はありませんが、申請にはかなりの手間と時間が必要ですので、取り掛かりは早い方がよいでしょう。

中小企業の補助率は、2/3です。有り難い割合ですが、逆に言えば、1/3は手出しです。300万円の支出があれば、100万円は自己資金を用意しなければなりません。

中小企業の通常枠の補助額が、100万円~6,000万円と規模が大きい補助金です。

「緊急事態宣言特別枠」に該当した場合の補助率は、3/4に上がります。300万円の支出であれば、自己資金は75万円に下がります。「3か月の合計売上高」が「30%減少」であれば、地域や業種を問わないとされています。

③中小企業の範囲、中堅企業の範囲

中小企業の範囲は、次のとおりです。大方の企業や個人事業主が対象に入ります。

  • 製造業その他:資本金3億円以下の会社 又は 従業員数300人以下の会社及び個人
  • 卸売業:資本金1億円以下の会社 又は 従業員数100人以下の会社及び個人
  • 小売業:資本金5千万円以下の会社 又は 従業員数50人以下の会社及び個人
  • サービス業:資本金5千万円以下の会社 又は 従業員数100人以下の会社及び個人

④補助対象経費

本補助金は、基本的に設備投資を支援するものです。設備費のほか、建物の建設費、建物改修費、撤去費、システム購入費も補助対象です。

対象のもの、対象外のものがサマリーに列挙されていますので、ご覧ください。

⑤事業計画の策定

補助金を受けるには、ここが一番の肝です。また、かなりの労力がかかるでしょう。合理的で説得力のある事業計画を策定することが必要です。

審査項目は、今後発表される公募要領に掲載されます。事前に備えておくためには、補助金の定番の、ものづくり補助金持続化補助金などを参考にされておかれると良いでしょう。

⑥補助金支払までのプロセス、フォローアップ

通常、補助金は、支出を事務局が確認した後に支払われます。そのため、一時的に全額を自己資金で賄わなければなりません。300万円の支出で200万円の補助が受けらるとしても、200万円が振り込まれるまでは300万円の資金が必要です。先方が支払いを待ってくれれば、別ですけど。

また、補助事業の終了後5年間、前述の「付加価値額の増加」状況を含めて、毎年、年次報告が必要です。

⑦事前着手承認制度

補助金の交付決定後に補助事業に着手するというのが、補助金の大原則です。例外的に、事前に着手することもできますが、不採択になった場合は、全額自己負担となるので注意が必要です。

⑧準備可能な事項

申請は、すべて電子申請です。そのための「GビズIDプライムアカウント」を事前に取得しておく必要があります。「税金の申告のように、税理士が全部代理で行ってくれる。」という制度にはなっておりません。準備を専門家に依頼したとしても、申請はご自身が行う必要があります。

サマリーには、「アカウントの発行に2~3週間要する」とありますが、私が昨年7月に取得した際には、ちょうど1か月掛かりました。今回、アカウント申請が殺到するでしょうから、もっとかかるかもしれません。

「事業計画の策定には時間がかかります」と注意されています。確かに、専門家でも結構時間を要する内容です。経験がない方は猶更でしょう。自分で行うのか、報酬を支払って専門家に支援を要請するのかの判断が必要です。ただ、専門家の支援を受ける場合でも、ヒアリングや資料の準備などの手間はかかります。

⑨注意事項

サマリーには、「本事業は、提出いただいた事業計画を外部有識者からなる審査員が評価し、より優れた事業計画を採択します。」と記されています。今までの条件がすべて揃ったとしても、内容が優れた計画が優先されます。下は、例示ですが、最近公表された中小企業庁ホームページからの引用です。

令和元年度補正予算中小企業生産性革命推進事業として実施している「小規模事業者持続化補助金」の「コロナ特別対応型」について、令和2年4月28日から募集を開始しており、10月2日に第3回公募分を締め切りました。申請のあった52,529件について外部有識者による厳正な審査を行った結果、15,421件の採択事業者を決定しました。

この補助金の採択率は、29.4%です。労力を掛けたり、専門家に外注したとしても、不採択というリスクがあることをご承知おきください。事業再構築補助金は、言わば目玉政策なので、ここまで低くはならないでしょうけど、持続化給付金の失敗(簡単過ぎて詐欺の大量発生)を踏まえて、審査は厳格に行われることが予想されます。

⑩事業再構築の事例

事例が列挙されていますが、例が少ないので、今後策定される「事業再構築指針」を待たなければなりません。

⑪Q&A

回答の数が少ないので、これだけでは全容は分かりません。これも「事業再構築指針」を待ちましょう。

専門家への報酬

ネットで検索してみたら、すでに、事業再構築補助金の仕事を請け負うサイトがいくつも見つかりました。

安いところで、着手金:10万円(税別)、成功報酬:交付決定額の10%(税別)ぐらいです。

ただし、交付決定額はいただける補助金の上限です。予定より費用が少なかった場合は、振り込まれる補助金も比例して少なくなります。また、年次報告書(5年分)のお手伝いは別料金になると思われます。専門家と契約される場合は、これらの点もしっかりと確認しておいてください。

報酬の多寡が採択率と比例するのかは、私には分かりませんが、できるなら信頼ある方にお願いしてください。

顧問税理士が受けてくれたら一番良いのでしょうけど、慣れないイレギュラーの仕事であり、かつ、手間の割には報酬が少ないと思われる先生も多いかもしれません。

サマリーから読み解く事業計画に織り込むべき内容

  • 事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行う。
  • 3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上が達成できる。
  • 緊急事態宣言により深刻な影響を受け、早期の事業再構築が必要である。
  • 合理的で説得力のある事業計画を策定する。
    • 現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性
    • 事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)
    • 事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法
    • 実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)
    • 事業化に向けた計画の妥当性、再構築の必要性、地域経済への貢献、イノベーションの促進

ここから推定すると、まず、経営環境について、「自社(Company)」「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」の3つの視点で分析します(3C分析)。そのほか、SWOT分析(もろに書いてあるのでこの分析は外せません。)やファイブフォース分析が必要でしょう。
そして分析後は、具体的な実現可能な計画をさまざまなビジネスフレームワークを使って策定することになります。

まとめ

今回紹介した事業再構築補助金は、事業者の方々にはかなり話が広がっているようです。あちらこちらで話題になっていることを耳にします。

持続化給付金(100万円又は200万円)があまりにも簡単な手続きで支給されたので、その延長のように思われていたらおそらく跳ね返されます。

申請に当たっては、まずは顧問税理士などにご相談ください。時間とお金がかかりますし、補助金を受けるとしても一定の投資が必要です。税理士や中小企業診断士などの専門家、認定支援機関や金融機関など、信頼のある方とじっくりと相談されてから着手されることをお勧めします。

【編集後記】

先月末から週に1回、ゴルフの個人レッスンを受けています。退職を機に、生涯できるスポーツ(趣味)の一つとしてゴルフ選びました。そして、やるなら上手くなりたいと考えました。

コーチには、「今年中に70台を出したい。」とお願いしています。無茶振りとは存じていますが、目標がないと頑張らない性格なので、高い目標を立てました。

また、シングルだった亡き父が果たせなかったエイジシュート(年齢以下のスコアで回る)ももう一つの目標としています。

いつか達成し、ここで報告できたら嬉しいですね。

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