辞書によれば
私が持つ旺文社の国語辞典には、次のように記されています。
- 収入…他から入ってきて、自分の所有となる金品。また、その額。
- 所得…一定期間に得た収入・利益。賃金・利子など。
同じようなものにも思えます。どちらでも良いような…。
所得税法では
税務職員や税理士は、収入と所得を明確に使い分けています。
年が明ければ確定申告時期となり、このような専門家と話す機会が増えると思いますが、違いを理解して会話してください。大雑把に言えば、次のとおりです。
収入とは、いったん手元に入った(入るべき)金額のことです。商売をされている方は、売上とも言います。給与所得者であれば、社会保険料などを引かれる前の金額です。
所得とは、収入から経費を引いた残りです。
したがいまして、収入の多寡よりも、一般的には所得の大小の方が重要です。
また、所得税はこの所得に課税します。
よくマスコミが、「年商(年収)〇億円」などと大きく言いますが、これは、収入の話をしています。卸売業者や株の売買を繰り返しておられる方は、億の単位などは直ぐに到達します。大工さんでも、1年間に2~3件新築を建てれば億になります。収入が多いのはそれなりに大したものですが、経営者としては残った所得が多い方が優秀ということになるでしょう。
10種類の所得
所得税法では、お金(収入)の性格により、所得を10種類に分けて計算します。それぞれの収入と所得は、次のとおりです。
利子所得
収入 = 利子所得
配当所得
収入(税を引く前) – 株式などを取得するための借入金の利子 = 配当所得
事業所得
総収入金額 – 必要経費 = 事業所得
不動産所得
総収入金額 – 必要経費 = 不動産所得
給与所得
収入金額(源泉徴収される前の金額) – 給与所得控除額 = 給与所得
退職所得
(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額)×1/2 = 退職所得の金額
譲渡所得
土地や建物を譲渡したとき
収入金額 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額 = 課税譲渡所得金額
土地、建物及び株式等以外の資産を譲渡したとき
短期譲渡所得の総収入金額-(取得費+譲渡費用)+長期譲渡所得の総収入金額-(取得費+譲渡費用)=譲渡益
譲渡益-特別控除額(最高50万円)=譲渡所得の金額
山林所得
総収入金額-必要経費-特別控除額(最高50万円)=山林所得の金額
一時所得
総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額
雑所得
公的年金等
収入金額 – 公的年金等控除額 = 公的年金等の雑所得
その他のもの
総収入金額 – 必要経費 = その他の雑所得
所得税法は所得を10種類に分けます。そのため、「こちらの所得にした方が、税が安くなる。」というものが出てくるので、現場では揉める場合があります。そのため、所得の種類の判定を巡る裁判例もたくさんあります。
まとめ
税務職員や税理士は、収入と所得を明確に使い分けています。ここを理解されていないと、ズレた会話になりかねませんので、ご注意ください。
大まかに言えば、もらったものが収入で、残ったものが所得と考えても差し支えないでしょう。
【編集後記】
私のような新人税理士は、税務署の相談会場に従事するという慣例があるそうで、私の場合、八女税務署(八女伝統工芸館)に、4日間(1/29、2/5、2/19、3/5)確定申告のお手伝いに参ります。
担当者としての相談会場への従事は20年振りなので、しっかりと準備して臨みたいと思います。
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