周知されてるとは言い難かった 日本税理士会連合会が言う「自治省との確認事項」 #239

税金や会計のヒント

相続税申告

昨年秋から、立て続けに4件、相続税申告書作成依頼がまいりました。うち1件は今年の2月に申告が完了し、あと3件については現在進行中です。

相続税の申告は、一般的に納税額が大きい上に、(相続税に詳しい税理士でないと)納税額を過少に申告したり、逆に納め過ぎたりする危険があります。そのため、慎重に検討する必要があり時間と手間が相当掛かります。期限と正確さの両面から心理的なプレッシャーを、日々感じているところです。

不動産の把握

相続税申告する財産の対象には不動産が含まれていますので、まずは被相続人が有していた不動産を特定する必要があります。通常は、市町村から通知が来る固定資産税通知書が残っていれば、存在を把握できます。しかし、保有する資産の評価額が免税点以下の場合などのいくつかの理由により、通知書が届かない(に記載がない)場合があります。この場合、相続人が一定の書類を有して市町村に出向けば、その市町村に存在する被相続人が保有していたすべての不動産の証明書(名寄帳)をいただけます。

証明書は、代理人で請求可能です。市町村ごとに様式や方法は違うものの、委任状と代理人の身分を証明するものがあれば良いところが多いです(事前にホームページなどでご確認ください。)。

税務代理権限証書

私たち税理士は、職務を遂行するに当たり、契約書の他に依頼人から税務代理権限証書(税理士を代理人と定め、税務代理を委任する書類)をいただきます。

そしてこの税務代理権限証書は、昭和60年1月に、自治省(現総務省)税務局固定資産税課と日本税理士会連合会との間で、「固定資産証明書を取得することをも含めて委任していると推定される」ことを確認していることになっています。つまり、税務代理権限証書あれば、前述の委任状が無くても委任を受けているものとして請求できるということです。

そして、平成28年7月29日の日本税理士会連合会から各地区の税理士会会長に宛てた文書(以下「当該文書」という。)には、次のように記されています。

また、この昭和60年の確認事項から30年以上が経過しておりますが、今般総務省に確認した結果、現在も確認事項は有効となっており、各自治体に対しても周知されている旨確認しております。

市町の現場では

今般の相続税申告の準備をするにあたり、私は5か所の市町役場を回りました。本来なら、相続人に証明書を取得していただくのですが、事情により私が代理人として取得することになりました。

しかし、5か所すべてにおいて、窓口に出られた方もその周りの方のどなたも、この確認事項のことをご存じありません…。

そこで、当該文書を提示して理解を求めるのですが、「このようなことは知らない」「税務代理権限証書に依頼人の印鑑がない(そもそも証書の様式には印鑑の欄はないのに…。)」「依頼人の身分を証明するものがない」などと、長いところは1時間くらいかかって何とかご理解いただきました。こちらも、遠方から来ており出直すのも大変でしたので、必死です。

最終的には、すべての市町役場で名寄帳を交付していただいたのですが、精神的にも疲れました…。

まとめ

前述の当該文書では、「各自治体に対しても周知されている」とありますが、おそらくそれは昭和60年の話であって、平成28年に改めて各自治体に周知されているのではないと思われます。

税理士会から我々にこのような連絡を周知していただいたことは有り難いのですが、「税理士会から、各自治体にこのことを文書でお伝えする」か、「総務省に再度周知を依頼していただかく」ことをしないと、税理士も自治体職員も戸惑うのではないかと思った次第です。

【編集後記】

2021年9月から就任したよろず支援拠点福岡のコーディネーターを、3月末で退任しました。契約を更新しなかった理由はいくつかありますが、最大の要因は、毎週月曜日(年間50日程度)の日程確保が苦しくなってきたことです。

1年半という短い期間でしたが、いろいろと勉強になりました。また、他のコーディネーターともお知り合いになることができたことは、私にとってはとても幸運でした。

この経験を今後の業務に活かしていきたいと思います。

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