SDGsのためのこれからの農業(日経新聞を読んで) #194

農業経営のヒント

2021/8/13日経新聞記事より

「有機農業転換へ補助金  農水省、脱炭素支援」という以下の記事が、日経新聞に掲載されていました。

農林水産省は化学肥料や農薬を使わない有機農業への転換を促すため、担い手に補助金を出す新たな制度を設ける。新法の制定も検討する。欧米は脱炭素や食料安全保障の確立に向けて環境配慮型農業への大型支援策を打ち出しており、日本も将来の競争に備える。

時代の流れに乗るのは良いことですけど、今までの政策は、集約化、大規模化などのようでしたけど、「有機」となれば、相反する政策とも言えるのではないでしょうか。記事には、「転換」とありますが、これまでの政策にはお金は出さない(減らす)ということでしょうか。「転換」であれば、過去の農業政策についての総括も必要です。

反省がないまま新しいことやるのが、半世紀以上の日本の農業政策のように考えています。スクラップアンドビルドなら良いのですが、ビルドアンドビルドでやり始める印象が私にはあります。

有機農業のデメリット

有機農業では、農薬や化学肥料を使わないことを選択しなければなりません。ご自分で作物を育てたことがない方は、「体に良いので素晴らしいことではないか。」と思われるかもしれませんが、良い事尽くめでしたら、国が言わなくても多くの農家がこれを選択していることでしょう。

農薬を使わないということは、病害虫の被害が多くなります。また、草も生え放題で、そこに労働力を投入しなければなりません。化学肥料を使わないと、収量が減ります。コストは前代で5割高くなるそうですので、結果、消費者は、高い野菜を購入することになります。健康や地球温暖化に強い関心がある一定の層は、それを喜んで購入してくださるのでしょうけど、多くの方は、野菜に「低価格」を求められます。野菜不足になって値段が上がると頻繁にニュースに流れますが、逆に、豊作で値段が下がってもニュースになる頻度はかなり低いと言わざるを得ません。

私は、家庭菜園の経験で、「農業とは、雑草と害虫との戦いだ。」と実感しました。また、土づくりの素人である私が化学肥料を使わないと、作物は満足には育ちません。

なお、私は、有機農業を否定しているのではありません。有機農業の困難さを(少しだけですが)分かっているだけです。農水省が補助金を出すのは、一時期にはプラスでしょうから、利用する農家が現われるかもしれません。しかし、有機農業を長く続けるには、「高くても買う」消費者を増やすか、有機農業でも収量が減らない(増える)栽培方法を提供する方策が必要です。今回の支援が一時的にならないようにしていただきたいものです。

農業とSDGs

この図は、日経新聞の記事から引用した、農業由来の温室効果ガス排出量が全体の4分の1というグラフです。「食料なんだからしょうがない」とは言っていられない量です。

SDGsの17の目標のうち、農業が関わるものはいくつもあります。その中で、今回の日経新聞に絡めてみると、「2.飢餓をゼロに」と「13.気候変動に具体的な対策を」が最も関連します。

2.飢餓をゼロに

  • 食品の安全性の向上
  • 安定的な食料の供給
  • 持続可能な農業
  • スマート農業の活用
  • フードロスへの取組み

13.気候変動に具体的な対策を

  • 農薬や化学肥料の不適切な使用
  • 施設園芸の加温や農業機械などで燃料使用
  • ビニールやプラスチックフィルムの使用
  • 農耕地から一酸化二窒素(N2O)が発生

まとめ

特に、13の話になると、いつかの時点で、農業(農家)に対する風当たりが強くなってくることが予想されます。その場合、生産コストの上昇、収量の減少、価格の高騰など、農業経営にとっては重大な影響を及ぼします。

農業に関わる皆さんは、今のうちに、何らかの準備、対策、行動を考えておかれることをお勧めいたします。

【編集後記】

私の後輩が税理士を開業しました。彼のスタイルは、「半農半税(理士)」です。

そして彼は、有機農業での栽培を目指しています。有機農業でも収量を増やす仕組みで取り組むそうです。

補助金を有効に活用してください。

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