「経費で落ちるから」という罠(支出)にはまらないようにご注意を #168

税金や会計のヒント

経営相談

ある方から依頼されて、中小企業診断士として経営相談をしてきました。新商品開発などの新たな収入源について、先方の考えに対して私の思う事を説明しました。「話を聞けて良かった。」と言ってくださったので(社交辞令だとしても)嬉しい限りです。

3時間ほど話した後、「他に何か聞きたいことはありますか?」と投げかけたところ、「いくらまでなら必要経費にできますか?」という質問を受けました。

必要経費とは収入を得るために支出するもの

この仕事をしていてよく聞く話が、「利益が出たので税金を減らすために経費を使う」という発想です。この経費が、収入を生じるために特に必要なものであればまったく問題はないのですが、本当に収入につながるのか?という疑問を持つものも散見されます。

もう1歩踏み込んで言えば、「使わないと損」という感じで話される方もいらっしゃいます。

私は、利益を設備投資に回すなら賛成することが多いのですが、まだ乗れる車なのに「新車に買い替えようかな」という話には賛成しかねます。

天から降ってくるお金?

事業には経費がかかります。そしてそれは、収入を得るために必要な経費として、収入から引くことで税金を減らすことができます。

「経費で落ちる」という感覚は甘い蜜のようなものです。私も、何か支出するときに、「経費だからいいや」という感覚になるときがあります。自分ではない誰かがお金を払ってくれるような感じです。プライベートで支出する際は少し冷静に考えることでも、事業用だとハードルが低くなることがあります。いずれの支出であったとしても、最終的に自分の懐から出ており、残が減っているにもかかわらず。

減税(お得)になるのは、例えば10%や20%など、その方の税率に応じた一部分だけです。

損失回避性

「税金を払いたくない」「税金を減らしたい」と考える方は、税金の計算の基となる所得を減らそうとされます。

その手段として「脱税」を選択される方は、いずれ大きなペナルティを払うことになります。そして、合法策として「節税」を考えられます。

所得は、収入から経費を引いた残りです。したがって、所得を減らすには、収入を減らすか経費を増やすことが必要です。

しかし、収入を減らしたら元も子もありません。それならばと、経費を増やそうとされます。確かに、経費が増えれば税金は減ります。しかし、それは正しい行動なのでしょうか。例えば、「(収入に結び付く可能性が少しはあるハズだとして)交際費を使って飲みに行く」「(急ぎではない)備品や消耗品を大量に買う」などです。

心理学では、人は、利益から得られる満足より同額の損失から得られる苦痛の方が大きいと感じることが証明されています。これを「損失回避性」と言います。そして世の中では、この性質を利用して、さまざまなマーケティングが行われています。いろいろな方法がありますが、例えば、「今買わないと損しますよ!」みたいな広告です。

「利益が出ているので経費をどんどん使いましょう」という提案は、税理士としては「税金を減らした」ということで褒めていただけるかもしれません(そんな税理士はいないとは思いますが。)。しかし、中小企業診断士としては手元に残るキャッシュが減るので叱られます。

私の提案

支出を判断するときの優先順位の第一位に「税」を持って来ないように提案しています。優先順位の第一位は「経営」であるべきです。経営者が、収入を得るために必要と判断されれば応援しますが、「使わないと損」とばかりに支出を考えられるようであればお諫めしています。近視眼的に判断せず、払うべきものは払って「キャッシュを残す」ことが将来にわたって継続していく(ゴーイングコンサーン)ために経営では重要だと諭しています。

【編集後記】

1年振りに痛風が再発してしまいました。去年に比べればまだ良い方で、どうにか歩けるし夜も眠ることができています。足を引きずるような歩き方をしており、不摂生を言いふらしているようです。今週もクライアントのところを訪問する予定がありますが、少し恥ずかしいです。明日のゴルフもキャンセルしました。

健康には人一倍気を付けるタイプなのですが、悪玉コレステロールと尿酸値の数字だけは下がりません(基準を僅かに超えている程度)。薬を飲むという選択もあるのですが、意地でも直してやる!という気持ちでいます。しかし、喉元過ぎれば熱さを忘れるように、腫れが引いたらいつもの生活習慣に戻るということの繰り返しです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました