ある質問
ある税理士事務所にお邪魔していたとき、その事務所の顧客から事務員のAさんに電話がありました。不動産所得の質問です。
「ある方が今度、使っていない土地を貸すことになった。年間65万円の契約で、必要経費は固定資産税の7万円のみ。これって、税金いくらになるのか?」
という内容でした。質問者ご自身の申告ではないようです。
Aさんは、65万円(収入)-7万円(必要経費)-48万円(基礎控除)=10万円に税率5%を掛けて「5,000円です。」と答えました(この他に地方税がかかります。以下、同じ。)。
法人の場合
法人は、個人とは違って、所得の種類というものがありませんから、すべての利益が個人でいう事業所得となります。
法人の税率は、中小企業であれば、15%(所得800万円以下の場合)とフラットな税率ですから、計算も単純です。(65万円(益金)-7万円(損金))×15%=87,000円が法人税額です。
個人の場合
所得税は、「総合課税方式」を採用しています。(一部の例外を除き)それぞれの所得で税金を計算するのではなく、すべての所得を合計してから課税します。所得の種類が分かれているのは、税率が違うというのではなく、収入から引く必要経費の計算方式が違う事が主な理由です。
ちょっと気になった私は、Aさんにお願いして「他に収入(所得)はないのか」確認してもらいました。実は、その方は給与所得者で、その年収が600万円ほどあるそうです。こうなると、他の収入(所得)、家族構成、その他の事情など、いろいろ聞かないと税金がいくらぐらいになるかははっきりとは申せません。
所得税は、詳しく個々人の話を聞かないと、税額は計算できない仕組みになっております。
更に、所得の額に応じて税率が変わります。
これらのことから、単純に「年間65万円の土地代貰ったらいくら税金かかる?」という質問には、即答できません。
まとめ
例えば、「配当や譲渡なら20%の税金がかかる」というのは、ある条件の下では正解です。しかしこれも、その内容を詳しく聞かないと分かりません。条件が違うと税率も変わるのです。
一般の方々のイメージと税金計算の仕組みがズレている場合がありますので、個別の質問には即答できない場合が多々あります。顧問契約を結んだ相手など、内実をよく知っている事業者なら話は違いますが。
このような事情がありますので、一般の方が簡単な質問と思っておられても、税の専門家が即答できない(しない)場合がありますのでご理解ください。
【編集後記】
私は、一般の方が簡単に思われる質問にも、なるべく即答せずに調べてから、その根拠とともに回答するよう努めています。
税法は毎年変わるし、思い込みがあったらいけないし、プロである以上は責任を持って回答するようにしています。
また、自分が逆の立場だった場合、その根拠を見せてもらうと安心するからです(このブログでもなるべく根拠条文などを書くように努めています)。
慎重な性格だなぁと、今更ながら思います。
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