年間いくら売り上げたら利益が出るのか計算されていますか(損益分岐点売上高について)

経営のヒント

コロナ禍での経営

今回も、卓球場を経営されている個人事業主の皆さま向けの話です。とはいえ、考え方は、基本的にどの事業も同じですので、良かったら他の事業者の方も参考にされてください。

今回のコロナ騒動では、「経営」というものを改めて考えさせられた方もいらっしゃるかもしれません。その経営判断が間違っていないか不安になったり、キャッシュが不足する心配が出たりと、経営者は日々悩まれたと拝察いたします。特に、卓球場のように、2か月間も営業自粛された皆さんは、相当苦しかったことでしょう。

さて、皆様は、予算計上は毎年されておられますか? 今回の記事は、予算を策定されていない方へのメッセージです。

予算設定の重要性

予算とは、1年間の収入と支出を見積もることです。これをせずに経営しているならば、それは「どんぶり勘定」と言われても仕方ありません(ごめんなさい)。

収入ならば、会費、時間貸し、大会開催、販売など、支出なら、仕入、光熱費、消耗品費などです。これを月ごとに見積もります。基本的には、過去の収支からある程度見積もることができるのではないでしょうか。

そして、その期に入ったら、目標の売上を達成するために営業する、新規企画を打つことが必要です。また、支出についても、予算オーバーしていないか、その原因は無駄な物を買ったからではないのか、本当に売上を伸ばすために必要な経費だったのかという検証が必要です。

予算がないと、自分の「経営」が正しかったのか、間違っていたのかの検証ができません。ご存じのとおり経営は、P(Plan:計画する)、D(Do:実行する)、C(Check:評価する)、A(Action:改善する)の繰り返しです。これを回すには、Pの計画、すなわち予算を決めておかないと先に進めません。

自社の損益分岐点(売上高)を知ろう

では、売上の予算は、どのように決めたら良いのでしょうか。単純に、前年の110%とする方法もあるでしょう。この場合、私なら、「自社の損益分岐点(売上高)を知ることが良い目安になりますよ」と提案します。

損益分岐点とは、そこを超えたら黒字で、下回ったら赤字という売上高のことで、人(事業)によってまちまちです。損益分岐点を知るということは、各自で、「自分の事業は、年間いくら売り上げたら、黒字になるのか。」というものを計算することです。

また、個人専業主の場合、収入から支出を引いた金額がプラスになったからといって、「赤字でなくて良かった」では困ります。生活費以上が残らないといけません。更に、残ったものの中からは、生活費以外に、事業用に借りたお金を返済する、危機に備えて貯蓄する、成長を目指して投資するなどの資金も捻出しなければなりません。

繰り返しになりますが、売上の目標を立てるために、まずは、自社の損益分岐点を知る必要があります。

損益計算書(決算書)を作る目的

帳簿を付ける主たる目的を、「税金の申告のため」と考えるべきではないというのが私の考えです。帳簿は、第一義的には「経営判断をするため」に付けるべきです。前述のPDCAでも、帳簿の一つ一つの数字は具体的な説得力ある指標になります。税金の申告のためというのは、私からしたら2番目以降の目的です。自らが生き残らなくては、税金どころではありません。

固定費と変動費

損益分岐点を計算するには、まず、損益計算書(決算書)の経費を固定費と変動費に分ける必要があります。

固定費とは、売上の増加や減少に関係なく発生する経費で、家賃、給料、保険料、修繕費などが該当します。

変動費とは、売上に比例して発生する経費で、仕入、外注費などが該当します。

ただし、1つの経費の中にも、固定費と変動費の両方の性格を持った経費が存在します。例えば、電気代の基本料は固定費でしょうし、使用量に応じて支払う部分は変動費です。大まかに損益分岐点を計算するのも良いでしょうが、できれば、可能な限り固定費と変動費を分けてください。とはいえ、あまり厳密にすると、時間がかかって大変ですので、そこそこで結構です。

所得税青色申告決算書の項目から

各事業所によって内容は違いますが、所得税青色申告決算書の項目に沿って、概ね以下のように分かれます。このまま計算されても良いし、自らの事業に即して分けられても結構です。

凡例:◎…こちら、〇どちらかと言えばこちら、△…内容により分かれる

決算書固定費変動費備考
売上原価  
租税公課  
荷造運賃  
水道光熱費基本料金を固定費に残りは変動費に
通信費  
広告宣伝費  
接待交際費  
損害保険料  
修繕費  
消耗品費内容による
減価償却費  
福利厚生費  
給料賃金定額分は固定費、売上連動分は変動費
外注工賃  
利子割引料  
地代家賃  
貸倒金  
雑費内容による

では、損益分岐点を計算してみます。損益分岐点の計算の「公式」は、次のとおりです。

  固定費÷{1-(変動費÷売上高)}=損益分岐点(売上高)

仮に、昨年の売上が1,600万円で、固定費が500万円、変動費が800万円だったとします。

この場合の損益分岐点は、

  固定費500万円÷{1-(変動費800万円÷売上高1,600万円)}=損益分岐点(売上高)1,000万円

です。「公式」ですので、素直にそのままの数字を入れます。

つまり、この卓球場の場合は、年間1,000万円売り上げたら、収入と支出が同額です。

しかし、ここは個人事業主ですので、プラスマイナスゼロでは、生活費が捻出できません。

去年の利益は、売上1,600万円-固定費500万円-変動費800万円=300万円でした。今年は、例えば500万円欲しいならば、利益部分を固定費に加えて計算し直します。

  (固定費500万円+利益500万円)÷{1-(変動費800万円÷1,600万円}=2,000万円

昨年の売上を今年は400万円増やせば、利益が200万円増えます。年間利益が500万円欲しいのであれば、年間売上目標を2,000万円に設定しなければなりません。これが、この店の売上予算です。12か月で割れば、約167万円です。

ご自身の損益計算書(決算書)からこれらの計算をして、予算決めの参考に使ってください。

ついでに

卓球場の収入は、一般的には、指導料、台貸し、大会開催、物品販売に分けられると思います。このうち、物品販売の利益率は僅かでしょうから、ここを増やしても利益の増大は見込めず、効率は良くありません。できれば、利益率が高い(変動費が低い)指導料、台貸し、大会開催からの収入を増やしましょう。

まとめ

損益計算書(決算書)から損益分岐点を計算しよう。

目標利益を得るための目標売上高を計算しよう。

予算を立て、それに向かって運営しよう。

【編集後記】

私が所属するある団体では、情報のやりとりが郵便又はFAXです。

問題はFAXです。私は所有していませんし、今後も所有するつもりがありません。

前回も今日も、ある申込みが「FAXで」とあり、その他の通信手段がありませんでした。仕方ないので、郵送で申し込みました。

デジタル弱者もいらっしゃるとは思いますが、FAX弱者のことも考えていただき、メールという通信手段も「併用」していただけるとありがたいと考えています。ペーパーレスで地球にも優しいし。

なお、中小企業診断士協会との情報のやりとりは、ほぼメールです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました