中小企業庁経営支援部長による解説動画
事業再構築補助金の第1回公募終了に伴う、中小企業庁の村上経営支援部長による解説動画がYouTubeにアップされています。20分余りの動画ですが、概要をここに記載します。詳しく見たい方は、事業再構築補助金事務局ホームページから視聴することができますので、ご覧ください。
ここには、この解説動画の他に、「1.背景編~本補助金制度誕生のお話し~」「2.これで分かる補助金制度の内容~」「実践編」も掲載されています。第2回以降の公募に応募される予定の方、事業再構築補助金に興味がある方は、こちらもご覧ください。
村上部長
官僚にしては砕けた感じの方です。しゃべりも分かり易いです。おそらく職場でも、変わらないのだろうなと想像します。
以下、村上部長の発言の一部抜粋です(正確に起こした訳ではありませんので、年のため。)。
応募状況
応募件数は、2万2千件です。思ったよりもたくさん出てきたのは間違いない。この制度は期待されているので、嬉しい。
業種は満遍なく来た。1番多いのは製造業で約5千件ですが、もっと多いと思っていました。2番目に多いのはやっぱり宿泊・飲食サービス業約3千件で一番打撃を受けている業種です。3番目は、良いところと悪いところがはっきりと分かれた卸売業・小売業で約3千件です。4番目は生活関連サービス娯楽業でライブハウスなどのエンタメ産業で約1千件です。これ以外でも、農業・漁業からも来ています。
事業計画書
いろいろな声を聞いて嬉しかったのは、「事業計画を作ってみて良かった」という意見が多かったことです。事業計画書は、指針で「こういったことをクリアしてきてね」とあるんですけど、これが難しい。「中小企業にこんなハードルを用意して難しいでしょ。」と心配する声がいっぱい上がっていたんですけど、「やってみたら、やって良かった。」という声が多かった。認定支援機関の方といっしょに作成して良かったという意見が多数でした。
「事業計画書は15ページ以内で書いてください。」とされているので、最初は皆さん多いと思うけど、書いてみると短いというのが分かる。でも、事業計画書は、短くコンパクトにすることに意識して書くことで、大事なポイントが見えてくる。順位付けて絞って書かなくてはいけない。全部書くと、経営戦略としては失敗する。成功しそうな事業計画ほど、コンパクトにまとまっています。
認定経営革新等支援機関
一番多かったところは銀行。「成功報酬2割」で引き受けるところが結構でた。不謹慎だと思う。事業再構築の最後まで見届けて成功して、それで2割ならまだいいけど「採択されたら2割」はどうかと思う。補助金に採択されることは成功ではありませんから。3年後5年後に再構築が成功したことで「成功報酬」と言ってほしい。
地方銀行が約4千件あった。商工会議所が約2千件、商工会が約1.4千件、信用金庫3千件だった。小さい企業では、税理士及び税理士法人の協力が多かった。
申請した事業者からの声
事業主と認定経営革新等支援機関で良いチームができた。経営コンサルタントとか指導とかって、事業に上手くいっていた人は使ったことがなかった。今まで、事業計画とか経営コンサルタントが必要とは思っていなかった人たちが、今回コロナで苦労している。事業計画書で事業を言語化することで、事業主と支援機関がお互いに発見があり、良いチームが誕生している。
第1回公募の事業計画の特徴
この事業計画書で、なぜ、顧客(売上)が増えるのかという根拠の説明が弱い提案が8割だった。例えば、宿泊業では、ワーケーション型に施設を作り変える、コワーキングスペースとして活用する等が多かった。これ自体は再構築だけど、大宴会場をコワーキングスペースとして活用すると、360人の宿泊客が550人になると書いてあった。でも計画書のどこにも550人の根拠が書かれていない。
また、製造業が、植物エキスを抽出する設備を導入しエキスの市場を作るとしているが、そのエキスを誰が、幾らで、どのくらい買うのかの説明がない。
事業計画策定で見えてきた課題①
中小企業は、今まで自社製品(原料等)を取引先に納品するまでの想定で動いていた。その後、取引先が納品した製品を、どのように加工し、どの市場に投入、どんな戦略で、どのくらい販売するのかを考える必要が無かった。考えたことも調べたこともなかった。それは取引先が考えることとしていた。「作ったら売れる」と前提している。「作ったら採算が取れる」ではなく「売れたら採算が取れる」である。
事業計画策定で見えてきた課題②
マーケティングに必要な数字を調べることが困難なため、系列から外れた先の新しい市場での販売予測をすることが困難である。
市場予測が困難なのは分かるが、なぜ、宿泊者数が360人から550人になるのか?、なぜ、このエキスは設備投資により売れるのか?、を貪欲に考える機会としてほしい。
事業計画策定で見えてきた課題③
なぜ説明できないのか、これは認定経営革新等支援機関もできなかったためなのだろう。つまり、伴走した専門家も手が付けられなかった事項なのだろう。だから、個々の企業(申請者)の課題というよりも、中小企業から見ると、マーケティングのための環境が整っていなかったと言える。
まとめ
本補助金制度では、補助金を貰えるかどうかではなく、補助事業にチャレンジすることで、自分の会社の未来を見つけることに意味がある。見つけられない未来に補助金が付いても意味がない。
本補助金事業を、「良い事業の方向性を見つける」「良いビジネスパートナーを見つける」きっかけにしてほしい。
【編集後記】
中小企業が15ページものの事業計画書を策定することは、それほど多くないのかもしれません。
事業再構築とは別のところで、一度自分の事業を見直し(改善)してみたい方は、早期経営改善計画策定支援事業というものがあります。
専門家の協力を得て事業計画や資金繰り表を作成して取引銀行に提出する(融資を受ける前提ではありません)と、その専門家に支払うコンサルティング料の3分の2(最大20万円)を補助してもらえる制度です。融資のリスケ(金融機関への返済条件等の変更)を前提とする405事業(上限200万円)の簡易版といったところです。最悪の状態になる前に、一度立ち止まって自分の事業を見直すことに効果があります。
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